彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。

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■一月某日

No.561

年始に本屋で見つけて買ったアルチュセールの自伝を読み出すと、おもしろくて止まらなくなる。

銭湯のサウナでびっしびし汗をかく。
■一月某日

No.562

夜、『昭和の爆笑名人大全集』で、てんやわんやの漫才を見る。大笑いして涙が出る。いとしこいしに涙が出る。

深作欣二、死去の報。『仁義なき戦い』、『県警対組織暴力』、『北陸代理戦争』、『仁義の墓場』、『軍旗はためく下に』、どれもおもしろかった。『火宅の人』は大笑いして見た。『復活の日』はくだらなくて椅子から落ちた。近作では『いつかギラギラする日』がよかったし、遺作が『バトル・ロワイアル』というのが立派だ。枯淡の境地と名づけられる枯渇と無縁の監督だったわけだ。
■一月某日

No.563

執筆。
■一月某日

No.564

今日から京都に長逗留。川村クラス発表『メトロポリス』上演のため。

ホテルにチェックインしてから学校で『メトロポリス』の打ち合わせ。

ここで唐突に深作監督追悼特集。

『解散式』
一風変わったヤクザ映画ではあったが、まだ先行世代の様式美の影響の残滓が感じられたと記憶する。

『黒蜥蜴』
変なつまらなさを持った映画だった。三島由紀夫が蝋人形役で出ていた。当時の丸山明宏と深作が相性がよかったとは到底想像し難い。

『恐喝こそわが人生』
小学生だった当事、このおぞましげなタイトルが強烈でよく覚えている。見たい見たいと思いつつ、いまだに未見の一本。

『トラ・トラ・トラ!』
相鉄線沿線駅、天王町の今はなきライオン座で見た。同期のガキ友たちは喜んでいたが、たいそう退屈だったのを覚えている。山村聡のやたら沈痛げな表情がなぜか不思議であった。

『軍旗はためく下に』
文芸座で見た。
おもしろいのでびっくりした。監督の名をはっきり記憶した。この映画を含めて、清順の『けんかえれじい』、黒澤の『野良犬』などで邦画のおもしろさに目覚めつつあった。今でも黒澤映画ぱこれが一番だと思っている。それと見直してみて意外とおもしろいのが、『どですかでん』

『仁義なき戦い』
ただただぶっとんだ。真に興奮した。

『仁義なき戦い・広島死闘篇』
おもしろかったが、一作よりセンチメンタルなところが好きではなかった。もちろん興奮して見ていたんだけど。

『仁義なき戦い・代理戦争』
ただただ興奮した。

『仁義なき戦い・頂上作戦』
こんなおもしろいものがこの世にあるのかというほど興奮した。俳優たちがほんとみんな素敵だ!

『仁義なき戦い・完結篇』
あまり興奮しなくなった。

『新・仁義なき戦い』
多少肩透かしを食らった。

『仁義の墓場』
再び深作を信頼し始めた。

『県警対組織暴力』
最高傑作である!

『新・仁義なき戦い 組長の首』
やる気のなさが感じられた。

『やくざの墓場 くちなしの花』
見た記憶はあるのだが、どうしたわけか思い出せない。

『北陸代理戦争』
暗さがたまらなくいい映画だった。『仁義』の躍動感とは性質を異にした妙な暗さにぐっとくる。

『柳生一族の陰謀』
期待ほどではなかった。俳優たちがそれぞれのスタイルを崩さない演技をしていてばらばらなのだ。だから実に妙な映画に見えた。『仁義』出身者はそのスタイルで演じ、主演の萬屋錦之介は堂々とした歌舞伎スタイルなのだ。そういった意味でこの世のものとも思えない映画だ。すごい。

『赤穂城断絶』
前の『柳生』とほぼ同じ印象。

『復活の日』
なんとなく哀しかった。

『魔界転生』
途中で見ていて嫌になった。

『道頓堀川』
登場人物みんなが大げさで嫌になった。

『蒲田行進曲』
これで深作嫌いが決定的となった。とにかくキャラクターが全員くだらないと思えた。もう深作の映画は見まいと心に決めた。

『火宅の人』
でも見た。大笑いして見て、存外面白かった。監督本人はまじめに撮っているに違いない、作家たちのエピソードの映像化が『オレたちひょうきん族』のようですばらしかった。

『いつかギラギラする日』
久しぶりに見た深作で、見直した。さすがだと思い直した。

『忠臣蔵外伝 四谷怪談』
感心しなかったのは、四谷怪談の解釈に疑問を覚えたからだった。伊右衛門がマッチョなのが乗れない。ニヒリズムが欲しい。

『バトル・ロワイアル』
さすがだと感銘した。生き残った少年少女に深い共感を覚えた。青少年に悪影響を及ぼしてけっこう。映画はそうしたものだ。誰が道徳を説かれたくて映画なんざ見るものか。

と以上勝手なことを乱暴に書きました。観客というものは勝手なもので、自分の趣味に合わないと、裏切られたとがんがん怒るわけだ。

どこかで私もこんなふうに書かれているのかも知れない。いざ自分が観客の立場にいれば、かようなまでに勝手な感想を述べるのであるから、たとえ自分に対してのそれを目にしたときも気にしたり怒ったりするのはやめようっと。

合掌。

■一月某日

No.565

朝起きると、大雪。

お買い物して大学へ。

授業。『メトロポリス』の稽古はいよいよ佳境を迎えつつある。

会議。十時を過ぎる。みんなでそばの湯豆腐屋で夕食と一杯。

■一月某日

No.566

午前と午後、授業。

くたびれる。

大道具のたたきを終えた学生達と近所で飲み食いし、帰りにゲーセンでシューティングゲームにはまる。こうした新機種が出ていたとは知らなかった。弾を避けたり、こちらから身を乗り出したりとさらにヴァーチャル度が増しており、汗をかくほどの運動量で運動不足にまことに好都合だ。酔いも覚める。

■一月某日

No.567

昨夜のシューティングゲームのせいで太ももがぱんぱんに張っている。弾を避ける際にスクワットの姿勢をとるせいだ。

錦市場で串さしのはもを立ち食いし、あん肝、小魚の佃煮などを買う。ぐい呑みを買う。味気ないホテル滞在に花を添えようというわけだ。

四条のジュンク堂でやまほど本を購入。ついにというかやっとというか、遅いというかドュボールの『スペクタクルの社会』が文庫本化されたのね。

大学で観世栄夫先生クラスの発表『綾の鼓』を見る。

その後、稽古。

パリダカもいよいよ佳境だ。負傷退場していた篠塚が退院との報。よかった。

元全日プロレスラー剛龍馬が新宿でひったくりの罪で逮捕の報。ここ数年は金に困り、ホモビデオにも出ていたという。そのビデオのタイトルが『極太親父』というのが笑っちゃうというか物悲しいというか。

いろいろあってくたびれた。あんまり、くたびれたばかりいうと、みのもんたに叱られそうだけれど。

ところで大学の演劇センターが発行する小冊子用の質問でこんなのがあった。

「川村先生はこわい顔をして考え込んだ後にとてもおもしろい発言をされることがありますが、表情と思考は裏腹な関係なのでしょうか?」

こんなのもあった。

「川村先生について『知り合ってからの印象と知り合う前の印象がまったく違う』というウワサを聞きますが、ご自分でこの差はどこにあると思われますか?」

両方ともよくわかりませんと答えた。おそまつ。

■一月某日

No.568

日曜日。

比叡山の北白川ラジウム温泉に行く。

ホテルから電話をすると、車で迎えにきてくれた。

休憩所にはジーサンバーサンが思い思いの格好で転がっており、湯治場の雰囲気。湯船は小ぶりだが、湯質はかなりいい。休憩所で寝転がっていると体が芯から温まっているのがわかる。テレビでは駅伝が放映中で、バーサンたちがしきりに京都チームに声援を送っているのが聞こえる。

「北海道は遅いなあ。向上心がないんやろなあ。」などと勝手なことを言っている。

出るときは雨。

温泉のマイクロバスで銀閣付近へ。迎えは来てくれたものの、帰りはここまでなのだ。せっかくだから雨の銀閣を見る。

ひどく遠くにきてしまったという思いをしながら、銀閣の森の中を歩く。シーズン・オフだ。

哲学の道の途中で湯豆腐と熱燗。

寒いのでホテルに戻り、宅配ピザなどを取って、しみじみとテレビで『リプリー』を見ていると、物寂しい気分になる。

■一月某日

No.569

今日からスタジオ21の仕込み。舞台美術がいい出来の予感。どうもこのクラスはスタッフ気質だ。

昨日のW−1の詳報をネットで読む。

要するにサップは律儀なまでにプロレスをやったわけだ。十分予想できたことだが(なんといってもW−1なんだからね)、ホーストまできっちり付き合うとは!どいつもこいつも守銭奴!それにつけてもW−1って何だ!?

仕込みの時間をぬってゲーセンに行き、再び警官ゲームに挑むも、終了後掲示される能力がいつもC止まりだ。

10時仕込み終了時間。先生はスタジオ閉めるので最後まで付き合ってなきゃならないのよ。

帰り道、寿司屋に寄る。

■一月某日

No.570

昼間の空き時間を利用してまたまたラジウム温泉に行く。

迎えの車のオジサンが横浜出身というのでしばし横浜話で車内盛り上がる。オッサン、綱島が実家でY校卒業生だという。

こっちの人はなかなか腹を割らない、その上さりげなくケチだとオッサン言う。さりげなくというところがミソだ。

確かに私も感じつつある。東京者も京都者同様誇り高いが、ざっくりとしている。

平日の昼とあって五人の客数。湯につかり、広間で悠然と原稿用紙を広げ、湯船と広間を幾度となく往復する。

腹が減ったので釜揚げうどんなどを食べ、煙草をくゆらしていると、バーサンたちがひとりふたりと去り、ここ温泉宿には恐らく湯元から流れてくる流れの音が聞こえてくるばかりで、自分が指名手配になって逃げてきた境遇のように思えてくる。

四条に出てまたまた本、ホークス、レオーネなどの映画本を購入し、大学へ。

スタジオ10時に退出。

■一月某日

No.571

午前の授業なので早起きしてホテルのレストランに行くと原一男監督と会ってびっくり。原監督は早稲田で同じく客員教授をしていた時期が一年重なっており、研究室でも同室だった。どちらが窓際のいい机を取るかで、私は監督に譲ったのだが、この人もおもしろい方で「ケンカになるからジャンケンしましょう」と提案され、私がパーで勝ってしまった。このあと同室になったのが小沼の純ちゃんね。

監督は京都芸大の特別講義のために来ている。

一回生の授業に行くと、学生達なぜか着物を着て日本舞踊を踊っているので、何事ぞと憤っていると、曜日を間違えたのだった。私のクラスは明日だった。

一瞬びっくりカメラかと思った。みんなに大笑いされる。

なにやってんだろね、おれ。たまにこういう信じられないことをしでかすんです。長嶋茂雄のことを笑えない。

■一月某日

No.572

午前中、一年生の最後の授業。このクラスで何をテキストにしていたかというと、三好十郎の『冒した者』である。この戯曲は単純におもしろい。

『メトロポリス』の場当たり開始時間がおして延びる。

三時に開始。

その後、二回通す。上演時間が50分ほどだから可能なことだ。
今日はみんな疲れたので九時に退出。

夜、差し入れのさば寿司を食べて、明日の英気を養う。

■一月某日

No.573

正午、研究室でリクルートの高校生用の大学紹介のWEBサイトの取材。

晴れていたのが、いきなり雪が降り出す。

二時半、通し稽古。

晴れたかと思うと雪。

七時の開演時に雪はまた降り出す。

大したミスもなく終わる。

まあ、学生、よくやったと思う。

おつかれさん、だ!

明日の夜、帰らなくてはならないので、初日パーティー。

飲む。

雪のなかをホテルまで歩いて帰る。

 

■一月某日

No.574

昼間、相国寺に行き、鳴き竜などを見る。

『メトロポリス』二時、六時、二回公演無事終了。

最終ののぞみで東京に帰る。

まあ、早稲田のときもそうであったのだが、こうしたことはあくまで種まきの部類に属することであって、現場の演出はなにもカタルシスもなく、納得もいかず、精神的な整理もされてはいない。学生と作品を作るというのは基本的に完成を求められるものではない。はーあ、くたびれたよ。一刻も早く大人の世界と時間に戻りたい気分で一杯だ。
■一月某日

No.575

早い時間の打ち合わせ後、コクーンで『桜の園』を見る。

渋谷でうどん食べて帰る。

やっぱりうちがイチバンねえ!(おぱはんふうに)

京都滞在中からずっと読んでいるのだが、『昭和の劇 映画脚本家笠原和夫』のおもしろさといったらない!快著だ!
■一月某日

No.576

休日。ぐだぐだ。遊静館より一歩も出ず、終日読書。
■一月某日

No.577

信濃町で打ち合わせ。

その後、神保町で編集会議。

ゴルドーニに寄り、旦那としばししゃべる。

淡路町の「まつだ」で熱燗一本つけてもらい、焼き鳥、ざるを食べる。

帰り、新宿に寄ってバーで軽く一杯。
■一月某日

No.578

原稿を上げる。

その後、三軒茶屋でミスターKと初対面。

打ち合わせ。

せわしない夜だ。
■一月某日

No.579

昼間、図書新聞の書評原稿を上げる。

夜、世田谷パブリックシアターのアジアのプレゼンの稽古。

その後、飲む。飲み屋で『トーキョー・ボディ』上演中の宮沢氏一行とばったり遭遇。

見たいのだが、スケデュール的に無理かも知れない。
■一月某日

No.580

原稿書き。

夜、プレゼンの稽古。

帰途、大江戸線で新井純さんと偶然会ってびっくり。

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