彷徨亭日乗〜川村毅の日記〜

川村毅
彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。
■八月一日
No.1708

休日とする。いろいろあって体も脳ももたない。

真っ昼間、談志の『芝浜』を聴く。

いろいろ片付け。

やっと少し先が見えた。

■八月某日
No.1709

午後、神保町の編集会議に酷暑のなか、よろよろと向かう。

夜、横浜へ。二俣川の戯曲講座。

■八月某日
No.1710

帝国劇場でミュージカルを見る。楽屋を見舞う。

その足で表参道へ行き、買い物。

■八月某日
No.1711

予定されていた三茶の打ち合わせに出かけようとしていたところ、電話が入り、急遽キャンセル。この暑さのなか、出かけてたら大損だった。

夜、朝日カルチャーセンター。

そいで終わって東京駅に急ぎ、ウナギ弁当、赤ワインとか買ってから新幹線の最終に乗る。

車内でなんと隣の若い会社員に話しかけられ、色々映画のこととか話してしまう。こんな経験はこれまでほとんどない。

深夜、京都着。この時期近畿地区の高校総体で市内のホテルは高校生に占拠されているということで、珍しく祇園近くのホテルに宿泊。

■八月某日
No.1712

もう京都の暑さいうたら半端やない。

オープンキャンパス。でも別にオープンとついてるからといって屋外でやっているわけではない。しっかし入試、受験ってのも我々の時代からすると変わったねえ。大学側はいろいろやる。過保護なんじゃねーかとも思うが、まっ、時代ですな。

ともたもたしているうちに京都は36度を超えたということだ。

で、今日は三条近くのホテル。

大浴場があってご機嫌だが、ここも高校生の団体がいる。

その後、会議。

■八月某日
No.1713

大浴場の朝風呂に浸かって、オープンキャンパス、二日目。

屋外はみるみるうちに38度を超えたという。

そいで今日は二条近くのホテルで、高瀬川あたりを散策し、河原町通り沿いの寿司屋でつまんで、先斗町のバーへ。何年ぶりだろうか、マスターは覚えていてくれた。ここのマスターはほんっとプロね。

シングル・モルト、二杯飲んで帰る。

■八月某日
No.1714

正午から学校でなんやかや会議。

そいで入試のケア・プログラム。なにをやるのかというと、いちいち説明面倒だから書かない。とにかく、いろいろあるわけよ。そいでこういうの初めてなもんで、なんとなくあたふたしながらやってるわけよ。

帰りの新幹線で隣のおじさんから話しかけられる。行きといい帰りといい、どういうわけなのだろうか。私は次第に人相がよくなってきているのだろうか。

おじさん、定年退職で甲子園の高校野球の観戦に行ってきたということだ。住まいは春日部だが仙台育英の出身でひとりで母校の応援にいったのだという。

なんか、いいよね。

この車内でなんとなくしんみりする。大学では様々なことが起こり、通過していった。まだこれからもいろいろあるだろうが。

もううちに帰ってほっとする。

■八月某日
No.1715

休もうと思っていたのだが、なんやかや落ち着かず、家の整理、後片付け。日乗では隠していたのだが、実は私、引っ越しをしました。マンハッタンです。嘘です。

この館をなんと名付けようか考えています。名前、募集中です。ふるってご応募ください。景品はたけぽんサイン入りのビキニブリーフ。

■八月某日
No.1716

何もする気が起きず。ただ引っ越しの片付けをひとたび始めると止まらなくなる。

本の詰まった段ボールが限りなく積まれている。

ドン・シーゲルの『刑事マディガン』を見るが、つまらないのでびっくり。

■八月某日
No.1717

午前中、『黒いぬ』のチラシ用で観世さんの撮影。

目黒のスタジオで。

撮影後、歌舞伎町で『M:i:III』を見る。

走っているトム・クルーズが現代版バスター・キートンに見えたのだが、それを狙っているのだろうか。

その後、紀伊國屋で『エンジェルス・イン・アメリカ』のDVDなどを買う。

帰宅してやおら執筆。

ところでボクシングの亀田問題だが、もう色んな人が言い尽くしているので幸い悪口を言わないで済んでいる。

■八月某日
No.1718

執筆。

■八月某日
No.1719

執筆。

■八月某日
No.1720

カンコンキン・シアター『クドい!』を見る。千秋楽のマチネというせいもあってか、なんと四時間四十分。最長だそうで、もうケツが痛いのなんのって、もうくたびれた。

信濃屋でアルコール度数59度の軽井沢蒸留所、シェリー樽のシングル・モルトを買う。

■八月某日
No.1721

執筆。

■八月某日
No.1722

執筆。

合間に久しぶりにプレストン・スタージェスの『サリヴァンの旅』を見る。最初見たのは今はなき扇町ミュージアム・スクエアの映像ホールで、たいそう感動したのだが、今見るとそうでもないな。困ったな。

■八月某日
No.1723

執筆。

それにしても小泉首相、靖国参拝の弁、「いついっても文句いわれるから15日にした」ってのは、かつてひとり昼酒をとがめられた飲兵衛から聞いた言葉で、「結局いつ飲んでても飲み過ぎだって言われるから昼から飲んでる」ってのと同じ理屈だな。

■八月某日
No.1724

執筆。

いいねえ、お盆は都内に人がいなくって。

スタージェスの『レディ・イヴ』を見直すが、もうほんっとおもしろい。先週『サリヴァンの旅』、どうということないなんていってごめんなさい。スタージェスはやっぱりサイコーだ。

というわけで引き続き『パームビーチ・ストーリー』を見る。

これも傑作!

■八月某日
No.1725

執筆。

最近、テレビで太田の、って太田省吾先生のことじゃないですよ、政治的発言多くて、若者の代表としてなんて枕詞で紹介されたりするが、なんで太田に代弁されなきゃなんないんだって若者もいるだろうし、そういう連中がやまほど太田の悪口、書き込みしてんだろうな。

加藤紘一氏の実家全焼。政治家という職業には何が起きても不思議ではない。劇作家もしかりだ。

■八月某日
No.1726

なんかいろいろ執筆。

その後、残っているダンボールの本の整理。

もう汗だく。夜、やっと一段落。

熱中症及びひどい肩、背中の凝り。

ジョンベネ・ラムジーの真犯人が逮捕されたという。

この事件が起こったとき私はニューヨーク滞在中で、テレビは朝から晩まで報道していたことを思い出す。

■八月某日
No.1727

『黒いぬ』チラシ、ポスターの撮影で目黒のスタジオへ。

いいチラシができそうで、楽しみ。

カメラマンのノニータさんっていいよね。

二郎さんと一緒に「飛びます飛びます」やって私、大満足。

マッチとノニータで記念写真まで撮っちゃう。のりのりの日曜日。

さあて、書かねば。

■八月某日
No.1728

終日、執筆もここまで書いたものをすべて放棄!

つらいっす。

ジョンベネ・ラムジーの真犯人、ジョン・カーってインチキかもしれんぞ。

このナルシストぶりからすると、自分の妄想を自ら信じ込んで、真犯人という英雄になりたがっている節が見られる。もう十分スター気取りだ。

■八月某日
No.1729

終日、執筆。

■八月某日
No.1730

三茶で打ち合わせ。

『AOI』、『KOMACHI』の再演、ニューヨーク公演について。

大打ち合わせ、三時間。

その後、二俣川で戯曲講座。

■八月某日
No.1731

ひたすら執筆。

夜、近所のラドン温泉に行き、マッサージをしてもらう。盲目のマッサージ師である。

この温泉のどこかうらぶれた風情が実にいい。

■八月某日
No.1732

ひたすら執筆。

■八月某日
No.1733

雨などあり、やや涼しく、一挙に疲れが出る。

中野の美容院へ。顔色悪いとか言われる。言われるとますます具合が悪くなった気がする。

実は今日高校の同窓会が横浜のニュー・グランド・ホテルで大々的に開かれているのだが、京都入りもしなければならず、断念。当初はそれに出席して新横浜の最終でとも考えていたのだが、無理と判断。みんな、ごめんね。芝居を見に来てぼくに会ってね。

そういうわけで、青葉でラーメン食って新幹線に乗る。

体のこりがひどいのがわかる。

京都に夜、着く。雷が鳴り、雷雨の気配。遊びに出るのも断念。

ホテルでシロクマ・ピースの感動ドキュメントとか見る。

とっとと寝る。

■八月某日
No.1734

大学。

コミュニケーション入試合格者の開講式。

まあ、いったん大学に行くとほんっといろいろあって構内を走り回ってるよ。

いろいろあって京都駅へ。ここでもまた新幹線に向けて走る。

新幹線が入ってくる瞬間、プラットホームの生ビールを、「間に合う」と聞くと、「当たり前よ」とおばはん、タブをひねるが、泡が飛び散り、「ちょうど空」にがっくりして乗車。シャツが汗でびっしょりで、隣の男に「豪雨ですか」とマジ顔で聞かれる。

車内で読書。新野氏の「演劇都市ベルリン」とかいまさら読んでいるのだが、おもしろいね。

■八月某日
No.1735

近所の古本屋でバタイユ、ユイスマンスを衝動買い。

執筆。

■八月某日
No.1736

暑さ復活。というか勃発。

ジョンベネ殺害自供のカー、やっぱりDNA鑑定は不一致か。

原稿書き。ふらふらする。

■八月某日
No.1737

執筆。

ふりかけトッピーのCMのベッキーは怖い。

二俣川に通っているとつくづく京浜地区の独自性というものを感じる。

京浜東北線で向かうと、大森、大井町あたりからその匂いがしてくる。両地域とも東京大田区だが、私にとってはこれも京浜地区となる。

蒲田、川崎、鶴見、新子安、東神奈川、そして横浜から桜木町、関内、石川町あたりまでが、私が感じる京浜地区だ。

小田原とか茅ヶ崎、逗子、湘南とかは明らかに違うわけなんですよ。

あっちになると石原慎太郎とかサザンの桑田の世界になって、陰がないんだな。

私の言う京浜地区って、どこかほこりっぽくて、初音町的陰があるわけ。と書いてもわかんないひとはわかんないだろうけど。

横浜駅を歩いているとほんっとハマギャルって独特のファッションセンス、エロハデっていうのか、なんかちぐはぐなんだけど、これはこれでいいのだという自信に満ちているから、おかしいとも言えない。

京浜地区の出身者というのも、お互いというか、私のほうでは直感的にわかってしまうもので、なんとなくその人の顔つき、物腰から非常に親近感を覚えてしまうことしばしばだ。川崎高校の島田とか、大岡川あたりを原風景としている柳美里とか。瀬田の矢口真里とか。そう、矢口って京浜ギャルの典型ね。頭の回転早いんだよね。

それにしてもずんの飯尾が住んでいるという大井町、石橋蓮司の故郷でかつて村松友視が描いたこの町、未だ下車したことないけど、興味あるなあ。そうそう、朔太郎が詩のなかでゼームス坂とか書いてるしなあ。ゼームス坂だよ、ゼームス坂。なんかいいよなあ。

あと蒲田もいずれじっくり探索したい。

■八月某日
No.1738

執筆。

マイク・ニコルズが監督して、ロイ・コーンをアル・パチーノがやっている『エンジェルス・イン・アメリカ』をついに最後まで見るが、やっぱりラストのプライアーの台詞には甘さを感じる。

2016年のオリンピック候補地に東京が選ばれたが、1964年のオリンピックのせいで、それまでの東京殊に下町近辺がずたずたにされたことを覚えておかなければならない。東京でやらなくたっていいよ。

■八月某日
No.1739

執筆疲れで、予定をサイクリングに切り替え、三宝寺池まで行く。ここは最高の湿地帯。しばし陶然として散策する。

なんか完璧に作家モードで人混みも嫌だし、人に会う気も起きない。

いきなりだが、やっぱグレース・ケリーっていいよなあ。バーグマンはがたいがしっかりしすぎてるよなあ。

早実の斎藤選手の人気は亀田への批判票というところもあるのではないか。

しっかし青ハンカチがいきなり人気だなんて、ほんっと日本国民だよなあ。だいじょぶかね。

それにしても、私高校野球嫌いなんですよ。高校生なんかちやほやしてはいけない。そのひとの人生への悪影響及ぼすだけだよ。

夜中、子猫が部屋にあがってきてポタポタ、うんちを垂らして歩いているので大騒ぎとなる。

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