彷徨とは精神の自由を表す。

だが、そんなものが可能かどうかはわからない。

ただの散歩であってもかまわない。

目的のない散歩。

癇癪館は遊静舘に改名する。

癇癪は無駄である。

やめた。静かに遊ぶ。

そういった男である。

バックナンバー一覧 最新 Home
■六月某日 No.1341
午後二時、三茶で劇作家協会の戯曲セミナー。

二時間、ベケット、ウィリアムス、オールビー、クシュナーをネタにしゃべくる。

与野に向かう。片柳氏の通夜。

蒸し暑い日だ。

夜、追悼のウイスキーを飲む。

■六月某日 No.1342
銭湯のサウナでびっしびし汗をかく。

夜、ルビッチ『ニノチカ』を見る。

■六月某日 No.1343
梅雨の晴れ間、中野、新宿と快調に撮影。
■六月某日 No.1344
テレビを見ていたらジャイアント馬場がふんどし締めてる映像が流れたので、こんなことをやっていたのかと思ったら貴乃花だった。

ぐだぐだとして京都入り。

京都の夜、関西圏でしか見られないやしきたかじんの深夜番組が楽しみになっている。

今回のたかじんによる架空の二子山物語のキャスティングはすごかった。二子山親方に小林稔侍、憲子に山本陽子、貴乃花は本人、景子が高島礼子、若乃花に林家正蔵、美恵子に和久井映見、すごいのが親方を看取った内縁の妻に宮沢えり。たかじんはこれを今年の大晦日、紅白にぶつけるという。

まったく私が飲み屋で交わしているような会話が番組になっている。

■六月某日 No.1345
テレビで大倉孝二氏を初めて見たが、挙動不審できょろきょろしてて愛想のいい笠木といった風情で心に沁みた。

『トラウマ学園GO!GO!』のチラシができあがっている。いい出来だ。おもしろい。稽古もいよいよ佳境で、なんかおもしろそうだぞ、これ。

今日はくたびれたので、というかどうもここ数日疲労感が濃いので、まっすぐホテルに戻り、ルームサービスで寿司なんぞ頼んで、もぐもぐやりながらトリビアとか見てハハハとか笑っている。

零時に寝るが、四時ごろ目が覚めてしまう。どうもホテルの枕がよくない。今に始まったことではないのだが。

今そこいらのホテルは生き残りに必死でどこも枕事情を重要として考えているのだが、京都は危機感がないのか、もっと枕環境について思えといいたい。

■六月某日

No.1346

午前中、戯曲の授業。

午後、トラウマ学園。

帰京。

■六月某日

No.1347

三茶でシャウビューネの『火の顔』。

もう劇場は業界の人ばかりで一般客はいないのではないかと思えるほどで、別に誰がどうとかいうことはないのだが、こうした雰囲気は苦手で居心地が悪いので終わったらとにかくとっとと帰ろうと思って見始めたところ、なんだか妙に演出がださくてのれない。このだささはカストルフの確信的な「ずれ」による計算というのではなくて、演出家本人が無自覚なだささで、この程度の演出・劇作ならば東京のあちこちにいるのではないかという印象だ。なんだか退屈な小劇場を見たという感じがする。

すいません、生意気いって。外国人だといいやすくって。

遠いところからみなさん、ごくろうさまです、おつかれさまでした!

いい思い出を東京でつくってください!

新宿で「い志井」で肉食って、その後寿司を食べる。

■六月某日 No.1348
今日は今日でベルリナー・アンサンブルの『アルトゥロ・ウイの興隆』を見る。

いやー、これはおもしろかった。もうさんざっぱら言われ尽くされていることだが、主演のマルティン・ヴトケの素晴らしさといったらない!

やはり舞台は俳優だ、といまさらながら痛感する。いくら演出、戯曲がよくても俳優が良くなければ無なのだ。

これで今日もつまらなかったら、日ごろドイツ周辺には碌な目にあってないこともあって、なにが「日本におけるドイツ年」だ、とビヤホール・ミュンヘンでテーブルのひとつやふたつひっくり返してやろうと思っていたのだが、見終えて元気が出ました。

■六月某日 No.1349
休日。

『恋人よ帰れ!わが胸に』を見る。

夜は女子バレーボール。ご多分に洩れず、菅山かおるに注目する。カメラも彼女ばかりを追っている。人気出るぞ。

■六月某日 No.1350
練馬で撮影。

困難と予想された撮影を大事無く終える。

夜、飲み屋でトルストイの墓について語り、号泣する老人と出くわす。

■六月某日 No.1351
ぐだぐだとして京都入り。

テレビでやしきたかじんを見る。

■六月某日 No.1352
授業。
■六月某日

No.1353

京都は朝から暑い。

授業。

午後春秋座で開催されるスーザン・ソンタグ追悼のシンポジウム見たいのだが、トラウマ学園が佳境なので行けず。会場は坂本龍一出席に加えて無料ということもあって長蛇の列。いかにもシブチン京都の光景である。タダじゃなきゃこねえんだ、京都っちゅうのは。

生ゆばと漬け物買って帰京。

林由美香死去のニュース。

■七月一日

No.1354

映画編集の準備をする最中、トラブルと思われる事態になり、大パニックに陥る。ひとりで大騒ぎして、人に電話して聞いたりとするうち、原因が判明する。大事ではまったくなかった。

夜、いろいろ揉め事をしゃべっているうちに本気で頭にくる。

■七月二日 No.1355
横浜、小港、山手あたりで撮影。これで短編『赤いくつ』の撮影終了。

夜、大和屋竺の『荒野のダッチワイフ』を見る。傑作だ。

■七月某日 No.1356
編集準備。初稿の再チェックなどいろいろめまぐるしく動く。
■七月某日 No.1357
朝、新幹線に乗って京都入り。これから二週間の滞在。旅行かばんと編集用のカメラ一式を担いでいくのであーる。

早速、村川君の協力を得て、パソコンでビデオ編集を始める。

夜はトラウマ学園の稽古。

■七月某日 No.1358
午前中から編集にかかるが、パソコンにトラブル発生し、ままならず。フィルム出身者である私にとってはやはりどうもこのパソコン編集は限りなく虚を相手にしている感じがする。

午後、稽古。

パソコンを変えてかかると今度はうまくいく。取り込み終了。

夕方、『AOI』のドイツ語訳をしているステファン氏と訳の質問を受けたりと打ち合わせ。

夜、十時まで稽古。

ホテルに家から送った枕が届いている。

2012年オリンピック開催地ロンドンに決定というニュースに意外の感。わたし、もうパリだと思い込んでいた。ロンドンかパリかといったら絶対巴里派。食事と映画が豊富な都市ね。ベルリンは演劇の街でいいんだけど、食事がちょっとねえ。

■七月某日 No.1359
家の枕で快眠。

午後から稽古。

夜、会議。日付がまわる。

ホテルに帰ってロンドンのテロを知る。

■七月某日

No.1360

午前中から編集。

午後、稽古。トラウマ学園なかなかもりあがっとる。メンバーは総勢40人いるのだが、いずれもキャラ強し。

そういうわけで学内中をなんやかんやと走り回っている。

■七月某日

No.1361

午前中から編集。村川から技術を伝授され、なんとひとりでやっているのである。やっていくうちに快感を覚えだす。映像の血が騒いでいるのであーる。

ひとりで夜まで編集を続け、自分のナレーション録音までやってしまう。孤独で地道な作業。舞台の学生と比べて映像の学生がみなどことなく寡黙な雰囲気であるのがよく理解できる。

■七月某日 No.1362
トラウマ学園は仕込み。私は朝から編集室にこもり、村川と作業。ほぼ90パーセント完成。

十時近くに終える。トラウマ学園も無事装置が建って、みんな帰宅していく。

村川と焼肉食べる。村川、「うま、うま」と呟きつつ食べる。

雨が降ったりやんだりで気候は蒸し暑いが、私にとっては冬の寒さよりは過ごしやすい。やっぱり夏の人間なのだな。

帰り道、雨上がりの夜の湿った道路を歩いていると、不思議な気分に陥る。怪談の気分だ。その中身とは自分がこれまでまるで縁のなかった土地でこうしていることの不可思議さだ。

■七月某日 No.1363
朝、コップに水を入れて飲んだら昨夜飲んでいた焼酎の残りが入っていたらしくげげーっとなり、酔っ払ってしまう。かーっ、朝酒なんて大嫌いだよ。

午前より編集にとりかかるも途中でレンダリングの機能が停止し、もうあとはクレジットとエンドロールというところで断念。原因不明のまま。

午後、トラウマ学園の稽古の最中、橋本真也急死のメールが入り、驚愕し、学生たちに思わず告げてしまう。

かつて両国国技館で新日本プロレスのリングを観戦中、闘魂三銃士を名乗る前の橋本が後方の扉をわずかに開けてメインエベントを覗いていた姿が思い出される。

これだけの期間大学にいると、これまで気づかなかった情報もあって、大学近くに山から下りてきた猿が出没するので注意とのことだ。さる学生は30頭に出くわしたという。舞台芸術学科で猿コースを創設して調教し、瓜生山猿軍団を結成して春秋座で儲けるというのはどうだろうか。しかし大学のキャンパスでいきなり30頭の猿にでくわしたときの精神状態とはいかばかりのものだろうか。

楽屋で昼寝していると学生にいたずらされる。

場当たりをわーわーやって十時終了。

■七月某日 No.1364
午前中から編集。昨日と同じ状態。策を変えてのぞみ、午後三時半近くに『赤いくつ』完成をみる。

完成の余韻に浸る間もなくトラウマ学園の稽古。

夜、例によって夜中の『たかじんONEMAN』を見て、ひとりけらけらと笑う。

■七月某日 No.1365
一時から稽古。

カレーうどんを食べると急激に眠気に襲われ、研究室前の廊下のソファでしばし昼寝をする。

四時、他のクラス公演のゲネを春秋座で観る。

六時、トラウマ学園のゲネ。なんか、おもしろい。

■七月某日

No.1366

二時、『トラウマ学園GO!GO!』の幕が開く。学生たち、堅いかなと懸念していたが、そんなこともなくのびのびやって無事終了。

「なんなすごいことになってましたね。妙な連中が次から次へと出てくる」

というのが見た人のうちのひとりの感想。

天下一品でこってりニンニク入りネギ多めを食べる。

どうも公演は大評判のようだ。

夜の公演終了。満席で場内湧く。

終演後、豆腐料理屋でいろいろ濃い話をする。

■七月某日

No.1367

四条を歩く。汗びっしょり。扇子とか買う。

祇園祭の準備が着々と進んでいる。

午後四時十五分という不思議な開演時間で幕が開く。

無事終了。

午後十時、御影通りのお好み焼き屋で打ち上げ。

■七月某日

No.1368

午後一時、合評会。

校舎にたどり着くまでに汗びっしょり。

■七月某日 No.1369
昨夜は祇園祭の山鉾を見に歩いたが、人の波が尋常ではなく一方通行にもなったりで、四個ほど見たところで断念し、神馬に向かう。そこのオヤジさんに祭りの混みようを話すと、「あれは若い頃行くもんで、京都の大人はよういきまへんわ」とのこと。地元の若者と観光客でいっぱいというわけだ。

午前中、テレビで祇園祭、鉾の移動中継をやっている。

叡電で鞍馬に向かい、くらま温泉で露天風呂、川床料理。

料理、鮎の塩焼きはうまいが、たいしたことはない。しかし川のそばは涼しく、雰囲気もんなので許せる。

帰京。

それにしても『トラウマ学園GO!GO!』は予想以上にうまくいった。

かつての『東京トラウマ』と似た創り方をした。最初、舞台のテーマを考えたとき、なにに今興味があるかとまず学生達に尋ねた。「同性愛」、「戦争」、「少年犯罪」、「阿部定」、「ダイエット」、「女性」、「売春」などが出て、興味あるテーマ別にグループ分けしてそれぞれ四つのパートを創ってくれという私の要請のもとスタートし、パーツのなかのひとつができるごとに発表し、いろいろ意見を言い合って修正したりと続けられた。創られていったパーツをつなげて全体の構成をするのは私の役目なのだが、順調にいったわけではなく、まるで意見の合わないチームなどもあり、公演一週間前でもまだ最後が見えず、正直言ってその時点で私もまた不安だった。

しかし楽しかった。ゲネを見たとき、おもろいと思った。

今回は二回生の公演なのだが、三回生、四回生の聴講も大いに参加し、これら外人部隊に助けられた。総勢四十名、二回生は個性派揃いで前説をほぼアドリブで成立させた千葉、突如落語を始める木ノ下、男気の北川、黙々と仕事をやり遂げるスタッフ女子たちと多才多彩で、さらに三回生の磯村は舞台監督として番長のごとくびしびし二回生を仕切り、四回生のダンサーきたまりは少年犯罪のパーツの演出を担当し、私がやればセクハラといわれそうで不可能だった演出を施し、作品に大いに厚みを加えた。はっきりいってこの数の二回生の技術から躾までを私ひとりが仕切るのは不可能であるところを三回、四回に助けられた。

二回生のなかではまだまるで自分がなにをやったのかちんぷんかんぷんの者もいるかも知れないが、いずれ、そうかとわかるときが訪れるであろう。

来年もこの回生の境界を越えた混成部隊が好ましい。

■七月某日 No.1370
橋本真也の葬儀をテレビでやっている。

アントニオ猪木が故人に一言と求められて「元気ですかぁー!」ってなに考えてんのよ。その後「元気でなければ天国にもいけない」って、さすが、このおっさんは長生きするわ。

一日中ぐたぐだとして、なんとキリンビールの応募で当たった富山県のシロエビを食べる。美味。

©2002-2005,Tfactory Inc. All Rights Reserved.