彷徨とは精神の自由を表す。

だが、そんなものが可能かどうかはわからない。

ただの散歩であってもかまわない。

目的のない散歩。

癇癪館は遊静舘に改名する。

癇癪は無駄である。

やめた。静かに遊ぶ。

そういった男である。

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■二月某日 No.1221
マチネの後、打ち上げ。

手伝ってくれた早稲田の学生たちもわいわいと来る。

四月からの演劇の客員教授は宮沢さんとのこと。宮沢くんがんばってね。

■二月某日 No.1222
マチネ、ソワレ。

『あさの』で豆乳坦坦麺を食べる。

公演中のマイブームはここであと旬菜麺もおいしい。かやくご飯も頼んで残ったスープに入れ、お茶漬けで食べるのよ。次は麦飯で試してみよう。

■二月某日 No.1223
東京公演千秋楽。

無事終わる。本当に無事終わる。停電もなく。

早稲田大学の諸君、ありがとう!

打ち上げは済ましているので手塚氏、ルー氏らと飲むが、私を含めて力が抜けて腑抜けのようであまりしゃべらず、帰る。

ルー氏はもっとしゃべりたいようだったが。

■二月某日 No.1224
ぐったり休む。

『ボーン・スプレマシー』が評判なので先に『ボーン・アイデンティティー』を見る。

ボーンって人の名前か。出来は思ったほどじゃないな。でもパリでカーチェイスという心意気は買える。

■二月某日 No.1225
溜まっていた原稿を片付ける。書いていると疲れが溜まっているのがわかる。

ぐったり。

夜中『21グラム』見る。

明け方未明大きな地震。ああ、きたなと思いつつ、じたばたしても仕方がないので寝ていた。寝る前に見た映画のせいか、死について考えつつ寝入る。

■二月某日 No.1226
小雪が舞い、寒い。

知人の病室を見舞う。仕事仲間。彼は癌だ。

自作の戯曲、小説などの構想をしゃべる健康な自分が恥ずかしい。ある意味健康とはがさつだ。

病室の孤独を想像する。

夜、神楽坂のディープラッツで柊のダンスを見る。

四組出演しているのだが、後半の二組、ひとつは片耳を怪我している白シャツ黒ズボンのオッサンのソロでゆっくりやってきてゆっくり立ち去っていく。ありがちのものだが不思議におかしい。最後がふたりのオバハンがほぼ下着状態でしこしこ踊る。えっらく不思議でけったいなものを見たという思いだ。オバハンふたりをじっと見ていたら食欲がなくなった。でもオバハンたちの加齢臭でカレーが食べたくなった。

これは畳半畳という企画で概ね出たい人は誰でも出演できるらしいのだが、まじめで正統的なコンテンポラリーの硬直したエリート臭に辟易としているむき(要するに俺)には思いの外、おもろい。今度出ようかな。

夜、病室の彼の表情が思い起こされる。

■二月某日 No.1227
キョンキョン、書類送検のニュース。

大阪へ。

アジア・コラボレーションに思いを馳せ、やや焦る。今焦っても仕方ないのだが。

■二月某日 No.1228
大阪入り。

劇場ではすでに装置が建てられており、明かり作り。

劇場はミナミのど真ん中で、さっそく劇場近くの立ち飲みやでひっかける。いいよ、アテの種類も豊富だし。

その後、スタッフと千日前通りのすし屋で夕食。

■二月某日 No.1229
午前中、上方演芸資料館に行き、黒門市場を歩いて通りの喫茶店に入る。

正午、俳優達到着。

三時から軽く各シーンを当たる。

黒門ラーメンを食べる。

七時本番。無事終了。

なにわの地回り小堀氏現れ、近くで飲む。大阪ガスの江本氏ともひさしぶりだ。

中島らも氏と共著の『せんべろ探偵が行く』をもらう。「せんべろ」とは千円でべろべろになれる安くて美味いアテのある立ち飲みやのことである。

隣のテーブルの原島氏の話に異様なまでに笠木が大喜びなので、どんなにおもしろい話なのだろうと気になって仕方がない。

べろべろでホテルに帰る。せんべろというわけにはいかなかったが。

■二月某日 No.1230
三時。マチネ。アフタートーク、内藤と。いろいろ世代のことをしゃべる。司会は小堀さん。ノッテしゃべる。内藤、ありがとう!

寒い日だが、金龍ラーメンをあえて元祖の舗道に面した立ち食いで食べる。

京都造形芸大から毎日制作助手として一年生ふたりがやってきているが、このふたりまったく遅刻せず、てきぱきと仕事をこなしている。さすがわが大学の者だ。

京都造形芸大といえば去年やったファスビンダーのトークの模様を映像の学生が『ペーパーアンソロジー』という小冊子にまとめているのだが、こいつがめっぽうおもしろい。特におもろいのが「ヒヒョウ家アキヒト君」という四コママンガでアキヒト君とナオト君、ふたりの登場人物がケッサクだ。

七時、ソワレ。この回は一番お客さんの数が少なかったのだが、舞台は見事な出来だった。俳優達集中していて、この公演のベストかとも思われたほどだった。

終演後、楽屋飲み。笠木に昨日原島のオヤジとどんなおもろい話をしていたんだと聞いたら、たいしておもしろい話じゃないとあっさりいう。

つぎに立ち飲みやへ。立ち飲みやにルー氏、伊澤なども現れ、わいわいと飲む。客の若者達がルー氏に気がつき、わいわいと囲むとルー氏、なぜか「おまえらちゃんと歯磨いて寝ろよ」とか説教を始める。

閉店時まで飲み、飲み足りないのでルー氏とホテルの二階の焼酎酒場に赴き、わいわいと飲む。ルー氏としみじみ中年男会話もする。

今回見終えたすべての人に私はルー氏に似ているといわれた。シルエットが似ているのだな。ふたりで歩いている後姿なんかほんとクローンのようだという。背中に漂う哀愁の種類も似ているという。

■二月某日 No.1231
ワッハ上方の演芸ライブラリーに赴く。今度は時間をとってここで寛美のビデオなどを見漁りたいものだ。

千秋楽。客席満席。

京都からアキヒト君とナオト君がマンガの通りにやってくる。

舞台の出来は昨夜のほうが断然いい。

千秋楽とはえてして俳優に力と思いが入り過ぎてしまってよくないケースが多い。

こうして『クリオネ』が終わる。

こんなに楽屋が楽しい公演もなかった。

手塚氏、私とルー氏で「ラーリールー」というコントトリオを結成することに決める。

帰りの新幹線で『せんべろ』を読む。東西の立ち飲みやの描写によだれが出てくる。しっかし小堀氏が究極ののんべえだとこれで初めて知った。それにしてもこのマイナー、アングラ嗜好にはついていけない。

でもこの本をガイドにして、いくぞ立ち飲みや!

神座でラーメン食べる。

■二月某日 No.1232
三茶に朝十時、アジア稽古に向かう。

みんなとやあやあ。

ウォーミングアップのヨガ。

その後、二時間、私の出番の稽古がないのでやることなし。

三茶の路地で立ち飲みやを発見する。今度いくぞと心に決める。

NHKの取材にぼんやりしたまま答える。

夜、わいわいと恒例の議論が始まり、さすがに疲れが溜まっているのだろう、目眩がする。よろよろと帰る。

■二月某日 No.1233
アジアの稽古が続くが午前10時開始というのがつらくて仕方がない。三茶まではおよそ二時間。通勤ラッシュ時にもろぶちあたりだ。たどり着いたときすでにくたびれている。

私の役は木村ケンタローというゲイのフィリピン人を女と思って恋する日本人の男だが、なんかなあ。

ところで大部分がもうできていると思ったら、かつて東京で二週間でプレゼンしていたときと同じペースなのでびっくり。

なんだか一日中まったりと稽古場にいて、まさに東南アジアの沼地を行進しているかのような気分になってくる。

夜の八時まで。

■二月某日 No.1234
なんやかんやと稽古する。肉のホルモンを飲み込まずにいつまでも口のなかでくちゃくちゃやっている気分だ。飲み込んではいけないのだ、コラボレーションだから。

夜七時、鐘下とトーク、レクチャー。

■二月某日 No.1235
午前中に加わったチームが開始一時間ほどで崩壊。笑ってしまう。

そいで会議の連続。それにしても鐘下はおよそ一ヶ月山口の合宿でこうしたことを続けていたわけで、よく耐えたものだと頭が下がる。鐘下だけではない、全員だ。よく頭がおかしくならなかったものだ。それとももうおかしくなってしまったのか、私も数日ですでにおかしくなってしまったのか!

それにしても今回結局参加していないトノがいなくてまったくつまらない。

トノは仕事でこられないということだが、会議を一番嫌っていたのが彼で私が二番目で、お互い顔を見合ってはため息をついていて、今回いないのでひとりでため息ついている。

原稿書きのため、やることやって早退し、原稿書く。

■二月某日 No.1236
昨日のチーム崩壊に関して、夜の会議は大紛糾だったらしい。

午前中、ドラマターグ会議に呼ばれて私も事情聴取される。そこで私が代替案を出し、そうすることになる。ナムロンと私でストーリーを練り直すことになる。

とにかくいろいろあって墓場まで持っていこうということもあって、でも原稿くれるなら書くけど、まあほんといろいろあって一日に一回は必ず頭にくることもあるけれど、やりますよ、私まじめにやりますよ! もう必死でやるしかないですよ!  朝早いのは嫌だけど。

そういうわけでナムロンとムスリムに関することの寸劇考えて、夜プレゼンしたら、もうひとりのムスリム、ディンドンがムスリムを馬鹿にしていると大激怒。表現が浅いと周囲からも大不評。ナムロン、がっくりした表情。おいらたちは浅いのを半ば確信的にやったのに。なんかみんなまじめだよ、表現においてクソマジメすぎる。まあ、遅れて参加した者だから文句はいうまい。

高田馬場で焼肉食う。

■二月某日 No.1237
午前中からナムロン、ディンドンとストーリーについて討議する。

確かにムスリムをはじめとして宗教を題材にするのは怖い。この怖さが日本人にはピンとこない。

午後、ナムロンとストーリーを作り直すが、ふたりで考えているとやっぱり登場人物が不真面目なキャラクター、のんだくれのムスリムとかになって、深いのなんてつくれねー。この環境下にいるとやたらひとりでふざけたくなる。

ああ、トノと一緒にふざけたい。

もういろいろくたびれきる。

これらのことを小説にしたらおもしろいかも。この案どこかのらない?

午後、会議中、ロディが明日は休みにしないかと提案すると、わーっと盛り上がり、鐘下なんざ、「明日は日曜だっけ? すばらしい!」と絶叫する。日曜ならひさしぶりに愛娘ラムちゃんと遊べるということだろう。わしは今夜上野のキャバクラ『しのばず』のラムちゃんに会いに行こうかって嘘ですからね、ここは。

そういうわけで急遽明日オフが賛成多数で決定し、あっという間に解散になる。

やはり、みんなまともだった!

そういうわけで帰るが、すさまじく寒い夜だ。

■二月某日 No.1238
そういうわけで休み。

ひさびさに『笑点』見るが、こん平師匠、まだだめなのか。高齢のためメンバー総入れ替え案もちらほら出ているらしいが、反対だ。

韓国語をひとつ覚えた。

チョンギレナイハサミダ!

アタマ、へろへろなの、ポク。

■三月一日 No.1239
朝からヨガ。

稽古、木村ケンタローの。まったくこの役は理解できない。阿呆な日本人だ。

8時に稽古終わる。

新宿で台湾料理。紹興酒四杯ほど飲む。

■三月二日 No.1240
やや二日酔い。つらい。ヨガ。まったく元気なし。

ナムロンとの絡みとケンタローの稽古。

トラムではセットが現れる。

夜、体重計に乗ると日々これだけからだを動かしているにもかかわらず増えている。

■三月三日 No.1241
堤義明逮捕の報。

私もまた20歳から座長稼業をやっていたので社会的常識がわからず、なんていう羽目にならないよう日々精進しよう。

稽古後、三茶の立ち飲みやにいく。

隣で飲んでいた近所の鍵屋から、新札の千円の裏表に0.5ミリで「ニホン」と印刷されているという話を聞き、店のオヤジから天眼鏡を借りてふたりで探す。

あった、みつけた。

新潮新人賞をとったという青木という男から本が送られてきた。

思い出した。早稲田で一年生の小説のクラスにいた男だ。抜群のセンスを持っていた。新人賞に応募せよといったと記憶しているが、定かではない。

これで早稲田時代の学生から新人賞とったのふたり出たぞ。別におれのおかげじゃないけれど。

夜、雪。

■三月四日 No.1242
大雪。舞台でテクリハ。

稽古場ではジョシュと鐘下が激しく対立。見てきてくれというので行くと怒鳴りあっている。

只野仁は快調だ。

■三月五日 No.1243
洗剤のCMで「なまがわきでもにおわなーい」というフレーズが「ママのわきがもにおわなーい」に聞こえてしょうがない。

12時集合だが始まったのは1時。

ここへきてこれまでほぼ全員が感じていた当企画の問題点が沸点に達した感がある。

それでもかろうじて続いているのはなぜか?

お金? まさか。聞けば驚くほどの安ギャラだ。お互いの友情である。プロデューサーはこのことに大いに感謝しなければならないだろう。

■三月六日 No.1244
時間にメンバー集まらず、完全にアンコントロール状態ということか。

この劇のタイトルを変えよう、『アンコントロール2』、もしくは『大混乱』。

テクリハ。夜11時終了。

帰りの地下鉄でディンドンと一緒になり、ふたりでため息をつき、微笑みあう。

みんな口には出さないものの、もうすべてがわかっているのだ。

それでもなげることはできない、俺達はプロなのだからという思いでやっているのだ。

■三月七日 No.1245
正午入り。

いろいろあって7時10分にゲネ開始。

10時終了し、明日のスケジュールのことで話し合い。もうフィードバックだブリーフィングだという言葉を聞くと蕁麻疹が出そうだ。

明日初日というのが信じられない。

■三月八日 No.1246
初日。

11時入りで完成していない後半を作り出す。その最中アイバンとアズザンが怒鳴りあい、アイバンは台本を叩きつけて劇場を出て行く。十分後、戻ってきて台本拾ってトイレにいった。

14時半、ゲネプロ。オモシロインダカツマラナインダカ、ワカラナイ。

楽屋でジョシュと先ごろ自殺したハンター・トンプソンについて語る。

ジョシュ・フォックス。この男のいうことは間違ってはいない。ただ方法論がいつも間違いなのだ。

幕が開く。

私が出るたびに大笑いされるのでびっくりしつつ演じる。

ナムロンがディンドンがざっくりセリフを飛ばしたと憤然と戻ってくる。

芝居が終わる。なんとかやり終えたのだ。

ロビーで乾杯。

いろいろな人がいる。こんなにいろいろな人が見ていたのかとびっくりする。

■三月九日 No.1247
元気なし。

疲れたまま舞台を終える。

くったくたでよろよろと帰る。

早く人間の生活に戻りたい。

明日は休演日だ、万歳!

■三月某日 No.1248
いったん幕が開くと平穏で順調に本番が続き、あの嵐と沼の日々はなんだったのだろうかと思う。

終演後、原島のダンナとか伊澤とかノブとかと飲む。

■三月某日 No.1249
ディンドンがよく楽屋で本番で歌う旋律を口ずさんでいるのだが、これがご詠歌に似ていてどこか陶然とさせる。

二回公演にその間の取材でぐったり。

それにしても鐘下君は元気だ。

私はといえば木村ケンタローという男について日々考え、小芝居を試す。

こうして幕が開いて冷静になると、ああすればこうすればとも思うが、デリケートな患者に告知をするようなもので何もいわないほうがいいとも思う。

いろいろなおもしろがりかたがある舞台であるようだ。

夜、ルー氏現る。

■三月某日 No.1250
なぜか気分も体調も絶好調。

終演後、手塚氏、宮本さん、笠木と飲む。

グマメラと木村に胸キュンしたという宮本さんの言葉が沁みた。

幸せになってほしいふたりだというのは手塚氏のコメントだ。

それにしてもおもしろがってくれているので助かった。

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