彷徨とは精神の自由を表す。

だが、そんなものが可能かどうかはわからない。

ただの散歩であってもかまわない。

目的のない散歩。

癇癪館は遊静舘に改名する。

癇癪は無駄である。

やめた。静かに遊ぶ。

そういった男である。

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■十月某日 No.1109
帰国。

東京は予想通り寒い。

結局フィリピンで脱稿できなかった原稿を書く。

■十月某日 No.1110
打ち合わせで代官山へ。

寒いわ。

帰り、近くの居酒屋でレバ刺し、生牡蛎等を食べる。

■十月某日 No.1111
休む。晴れ。

買ってきた葉巻をやる。

サウナで汗をかき、夕食を食べるとすぐに眠くなる。

■十月某日 No.1112
中野の美容院へ。

青葉で特製ラーメン食べ終えると眠くなる眠くなる。

本屋で14冊ほど買い、京都に送る。

■十月某日 No.1113
二俣川。

いつもより一日早く京都へ。

■十月某日 No.1114
大雨。

大学に行くと午後の授業は休講。松田君が走っている。雨に濡れないためだ。

そうこうするうちに雨脚強くなるので早目にホテルに帰り、篭り態勢に入る。ぐだぐだと執筆する。

■十月某日 No.1115
台風一過、晴れ。

授業。

東京からいろいろなことが入ってくる。

連絡入れる。

■十月某日

No.1116

午前、午後授業。

東京といろいろ交信。

なんか目がかすむほど慌しい。

松尾スズキとかエッセイで自分の忙しさを大変だといいつつ結局自慢げに書いているが、忙しいことなんざ威張れることではない。

ああ、目がかすむ。

新幹線に乗ろうとすると、「すみません、ちがいますよ」と白人に号車の違いを指摘されて移り、座ろうと思うとオバサンと猫がいるので、「間違えてますよ」というとおばはん「いやーっ」と叫び、猫もニャアとかいうので困っていると、間違えているのは私だった。

ああ、やれやれ。頭もかすんでいる。

気を取り直してウイスキーを飲む。車内で売りに来るミニボトルのやつね。缶のはプリン食べてるみたいで駄目ね。

なんだか疲れのせいで、妙な歌をくちずさんだり、ふと目にしたピンク映画のタイトル『牝猫くびれ腰』とつぶやいてみたり、ホッテントットという単語が気になって仕方なく、つぶやいたりしている。

■十月某日

No.1117

とにかく今日は休もうと思う。なんにも考えないようにする。

だが京都で借りてきた『闇の中の魑魅魍魎』を見る。中平康のものでカンヌ映画祭に出品されており、当時自分の『儀式』が選ばれるものとばかり信じていた大島渚が、駄作駄作と主張して大騒ぎし、顰蹙を買ったという騒動の中心の映画である。

私は初見。こんなものが今見られるとはうれしい。

このエログロ埴谷雄高みたいなタイトルの映画だが、江戸時代の絵師を描いた思いのほかまじめなものだ。

若い頃の麿赤児、江守徹が共演している。他に岡田英次、殿山泰司、南原宏治と豪華キャストだ。

若い麿は山根に似ている。

■十月某日 No.1118
『ハムレットクローン』稽古開始。

夜、飲み会で頼んでもいないのにやたらとお銚子が出され、酔っ払う。

■十月某日 No.1119
稽古。
■十月某日 No.1120
早くも仕込み。

稽古。

■十月某日 No.1121
早朝新幹線に乗って京都へ。ほとんど目が開いていない。東京駅でぼんやりと回転寿司屋の朝食を食べる。ベルトに納豆やら玉子焼きやら鯖やら豆腐やらが回っていてそこから三品選べるというやつ。

お客多し。黙々と食べる通勤者たちを観察する。

大学で『わらの心臓』の稽古。

とにかく眠くて仕方なく、とっととホテルに戻り、WOWOWで『牛頭』を見る。おもしろい。実におもしろい。しかしこのテイストは確実に私のなかにあるものだから新鮮味はない。

■十月某日 No.1122
早朝午前から大学。

午後『わらの心臓』の稽古。この劇おもしろいねえって自分の書いたのに感心してどうすんだよ。

夜、帰京。存外元気だ。

■十月某日 No.1123
『ハムレットクローン』の稽古が続く。

稽古場に向かう途中の電車で劇中の音楽のオリジナルCDが紛失したと聞き、自分でも一気に血圧が上がるのがわかる。

なんだかいっこうにわけがわからない。稽古場に辿り着いて説明を聞いてもよくわからない。劇団でよくあるような奇々怪々さだ。

音楽なしで練習をする。

見学に小林勝也氏現れる。こまつ座の地方公演の合間だという。

稽古終了後、勝也さんと飲む。

俳句好きの俳優さんがいて、その人が思わず後輩を殴り、そんなことするもんじゃないと同輩にはたかれ、その後ひどく反省後悔して、殴った後輩に手紙を送り、「ここで一句。秋の夜 殴り殴られ 芝居かな」と詠んだという。

そうしている最中、CDが稽古場で発見されたとの報が入り、みんなで万歳をしていると初めての店のその女将が何事かと尋ねてきて、詳細を古川君が話すと、お祝いにとビール二本と卵焼きをおごってくれる。

■十一月一日 No.1124
もう一年の終わりに近いのか。

小学館の編集会議。神保町で古書市をやっていて、すぐにイスラム関係のものを発見し、購入する。

稽古。

それにしてもCD紛失と発見は謎が多い。劇団となるとさらにこういうことが頻繁に起きる。誰かが黙っていたり、誰かが誰かをかばっていたりとするのだ。

酉の市、前夜祭で熊手を買い、屋台に入ってビールを飲み、バリ島で学んだケチャをダンサー達に披露すると泥酔者と誤解され、店を仕切るヤーサンに睨まれる。

■十一月某日 No.1125
稽古。

世田谷で『見よ、飛行機の高く飛べるを』を観る。

戯曲をよく分析し、読み込んだ演出であり、逆に戯曲の弱点もわかる。

ブルック演出のチェホフを思い起こした。

帰り、若いシェイクスピア研究者と一緒になる。

「女の子ばかりの稽古場ってさぞかし楽しいでしょうなあ。シェイクスピアなんかオヤジばっかで」と彼は嘆く。

■十一月某日 No.1126
二俣川の発表である。

二時よりリハ。四時開演。

四人が書いた戯曲の一部を文学座の香月さん、第三エロチカの伊沢、そして私がリーディングするのであーる。

四時開演。

いやはや香月さん、戯曲によっては二役、三役もこなして、こんなこというのも失礼だが上手いよ。

伊沢も戯曲の感想やらアドバイスも的確にしたりして成長したよ。

戯曲はどれも未完なのだが、読んでいて快感あり、いいと思う。講師としても誇らしいよ。

最年少は中二の佐藤さんなのだが、彼女が平成二年生まれ、12歳と聞いてまわりの大人たちは一様にショックを受ける。

この子がまだ12年しか生きていないんだアーということと、自分たちが年を重ねてしまっているんだあー、ということであーる。

近場の飲み屋で打ち上げをして、九時、新横浜駅から新幹線で京都へ。

ひとりになっても興奮が冷めず、車内でウイスキーなど飲む。

零時近くホテルにチェックイン。

■十一月某日 No.1127
やや酒が残っている。

『わらの心臓』を一時から八時まて稽古し、学生たちとの親睦の飲み会。

しかし、昨日の飲みすぎがたたって調子上がらず。

ブッシュ勝利か。まあケリーだっていいとはおもわんもんなあ。

とっとと寝る。

■十一月某日 No.1128
午前中から授業。
■十一月某日 No.1129
稲垣メンバーに続いて島田所属タレント、か。

私ならどう報道されるか、川村ティーファクトリー主宰、川村元座長、ただの川村助教授か。おお、こ、こわ。ただの容疑者だろうが人間なにに巻き込まれるかわからないから気をつけよう。

稽古。

ゲラチェック。

夜、高田馬場で打ち合わせ。

■十一月某日 No.1130
稽古。

ゲラチェック。

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