彷徨とは精神の自由を表す。

だが、そんなものが可能かどうかはわからない。

ただの散歩であってもかまわない。

目的のない散歩。

癇癪館は遊静舘に改名する。

癇癪は無駄である。

やめた。静かに遊ぶ。

そういった男である。

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■五月某日 No.1001
第三エロチカチーム、終了しこれにて公演が終わる。満席。

いやはや無事終わった。

スタジオで打ち上げ。

ゲストの小林勝也氏、おおよっぱらい。

■五月某日

No.1002

夕刻より『麻実れいさんの芸術選奨受賞を祝う会』出席のために大手町パレスホテルへ。蜷川さん、白石加代子さんらと久々に会う。麻実さんを柔らかく抱擁する。

ホテルのバーに流れる。萬斎氏、コータロー、福士氏、長谷川らと。

ホテルではちょうど伝説のマティニフェアなるものをやっていて、マティーニをがんがんやる。

長谷川、おおよっぱらい、私もまた大酔いで風花に流れる。

■六月一日

No.1003

サウナでぐったり。
■六月某日

No.1004

『クリオネ』が終わったと思ったらすぐに『ハムレットクローン』の稽古だ。

今年は大きな公演がないからのんびり絵でも描いて過ごそうかと考えていたところ、こまごまと忙しい。目が回る。とはいうものの、絵というものものんびりやれないのだが。

ブラジル前にはワークショップもあるし、サラ・ケインのリーディングもある。

昼間、表参道の某所で四時間の打ち合わせ。

ぐったりしつつ森下スタジオへ。稽古初日、どうもエンジンがかからず、ぼんやりとしたまま。

■六月某日 No.1005
侏儒の病人を見舞うという妙な夢を見る。

森下スタジオで稽古。

■六月某日 No.1006
昼間、大山のサイスタジオで打ち合わせ。

晴天で夏のような気候。

山利喜で飲む。二合飲んでけっこうへろへろになる。

■六月某日 No.1007
また妙な夢を見る。

私は北朝鮮の拉致被害者で逃亡しようとしている。すると金正日がやってきて自分も亡命したいからということで一緒に国境を越えようとする。逃亡の経緯はこれがまた夢ならではのシュールなスリルに満ちたもので、ここでは書ききれない。

どうやら韓国らしいところへの逃亡が成功するのだが、金正日は変装がすぐにばれ、逮捕されて虐待されてしまう。

という変な夢だ。山田山子に電話して夢占いをしてもらおうか。いや、やめとこう。

■六月某日 No.1008
稽古はすこぶる快調。

『ハムレットクローン』は徐々にブラジルに近づいている。

ブラジルの新聞社から質問事項が送信されてくる。

とにかく忙しくてあまりおもしろいことがない。

■六月某日 No.1009
ポルトガル語のナレーションを吹き込む。大阪でDJをやっているブラジル人、レオナルドさんがやってくる。頭のいい人だ。

稽古、快調に飛ばす。

■六月某日

No.1010

ブラジル人との仕事は二転三転するから最後までわからないと言われていたのが、そのとおりにやってくれるよ、ブラジル。

急遽、今までいわれていた日程を変更との知らせが入り、出発日を遅らせることに。

簡単にいってくれちゃうけど航空チケットおさえるので大変なわけだよ。

これで終わるんだろな、三転は望まない。

ブラジル通によるとこういうことがあるからやり遂げたときの達成感は大きいというのだが。

あと、ブラジル人は友達には最高だが、仕事相手としては最悪というのが、ブラジル人自身の言葉なのだが。まあ、そんなことはない、と今かかわっている人々の名誉のため強くいっておく。

すると野村万之丞氏、急死の知らせ。

言葉を失う。

同い年の44歳で、早稲田で同じ枠の真夏のワークショップを担当した仲だ。

文学部のスロープをやや難儀そうな足取りで歩を進め、あいさつに声を掛けると氏がジャケットに革靴であるのに比べて、Tシャツにサンダル履きという私の足元を食い入るかのように観察していた光景が思い出される。

やりたいことやるべきことは多く、本人の無念さ、周囲のショックははかりしれないものがあるだろう。

44ときいて、まだまだ若いだのなんだのというのが、いかに能天気で無責任なものかということだ。人それぞれに寿命があり、20代の晩年もあるということを人はしばしば忘れて無責任なことをいう。

合掌。

窪塚はこの後復活したとしたら、オオバケするかも知れない。

稽古。

山利喜で飲む。

■六月某日 No.1011
稽古。

また山利喜で飲む。

■六月某日 No.1012
いよいよ笠井さんとのワークショップが始まる。

一日参加の柊が具合悪そうな顔をして「げっけいかんのせいで、熱っぽいんです」とかいうので私はてっきりメンスのことをいっているのかと思っていたら、昨晩山利喜で飲んだ月桂冠が利いたということと後で知る。

まず私が『KOMACHI』と『欲望という名の電車』を使っていろいろやる。

後半、笠井さんで私も参加し、すさまじく汗をかく。私は踊ったのだ、というか動いたのだ。立ち止まると指先から汗が流れてくる。

その後、第三エロチカの会議。

夏の公演をやることになったのだ。

■六月某日 No.1013
昨日の激しい動きのせいで、今日はさぞかしばててるだろうと自分で想像していたのだが、全然元気。

引き続き私前半、後半笠井さん。

『KOMACHI』のなかの男の台詞を私が、老人の台詞を笠井さんがいう。

笠井さんは台詞が上手なのである。

三人称になるための訓練。

そう、ことに小劇場においては一人称で舞台に上がる俳優ばかりで見ていてうんざりする。誰も彼も、自分が好きで仕方なく、俺が俺がで私を見て見て、ばかり。

特権的肉体論が単純な自分好きに地すべりしてしまっているのだ。

褒められるのが好きで鏡で自分の顔ばかり見ている俳優とはやりたくない。

終わって高橋のどぜう屋でどぜうの丸、鯉のあらいなどを食べ、吟醸をやる。

■六月某日 No.1014
今日は四時間たっぷり笠井さんにやってもらうことにする。

私自身、笠井さんのやることがおもしろくて仕方ないのだ。

ご存知のように笠井さんはダンサーなわけで、ダンサー相手のワークショップはこれまで多くやっていられるが、今回のように俳優を対象にしたのは日本では初めてだという。外国では随分招待されて、やられているのだ。

舞台演出家がやる視点とは違っていて実におもしろいのだ。

こういうことをお互いほそぼそと長くやろうと確認しあう。

終わって焼き鳥森下の二階で打ち上げ。

梅雨の晴れ間、夕方から飲む生ビールはうまい。

しかもここの二階はほとんど人家の部屋に上がって飲んでいる風情で、開け放した窓からの路地の光景がまたいい。

わいわいと酔っ払う。

実にいいワークショップだった。あまりにおもしろいので人に大声でいいたくない気もする。

笠井さんが、ワークショップの最中、ご自身で見本を見せつつ、夜中にやるといいといっていたので、酔っ払ってやってはいけないのですね、と聞くと酒を入れてはいけません、というので、ではよく夜中でおひとりでやってるのですね、と返すと、いやいや酒を飲まずにいる夜でないと出来ないのでそういう夜は滅多にないのです、と正直にいわれるので、私は、なるほど休肝日ですね、ととぼけたことをいうと氏は黙られた。

■六月某日 No.1015
『ハムレットクローン』の稽古。

三日ぶりに見たが、ポルトガル語のナレーションも入ってなんかこれおもしれえぞ。

■六月某日

No.1016

またブラジルからいろいろ変更事態が寄越される。もっと早い時期に言えといいたいのだが、担当のこの男、アマゾンにいってマラリアに罹って今まで入院していて連絡できなかったってホントかね。

理解した。ブラジルの辞書に決定という言葉はない。

ところで先週のワークショップでは舞台上で三人称になることが課題になっていたが、これは作家にも同様のことがいえて、要するに無私になって文章を書くというのが究極の境地だ。無私を欲望する裏側には強烈な自我がある。私はこの自我が憎いが、憎いなどという感情で対している限り、無私からはまだ遠くにいるのだろう。無私にいきたい。

開高健の『夏の闇』を十数年ぶりで読み返した。最初に読んだのは二十歳代であったと思う。最近、同世代の人から自分も再読したのだがよかったという話を聞いて私も読んでみた。

執筆当時作者は42歳。今の私より年下であり、かつては読めなかったことが圧倒的にわかる。これだから少年青年時の読書とはあてにならない。

『いきの構造』も読む。

■六月某日 No.1017
稽古。夏の気候。どこかで風鈴の音色のする森下を歩く。

最近の主な稽古場は森下、大山、三茶だが、どの町も大好きだ。きっちりと独立した町という印象を受ける。独立町はおいしい店が多い。

■六月某日 No.1018
森下の地下鉄のエレベーターに乗っていたら急にすぐ上にいた女子高生が逃げるように駆け上っていったので、「のぞいちゃねえよ!」と大声をあげたくなるが、抑える。まったく馬鹿な大人のせいでガキどもは妙な自意識を増長させてしまっている。それともただの防衛というのなら、わざわざすぐ見えそうな短いスカートはいてんじゃねえよ。

話は変わるが是非長生きして電車かなんかで「おじいちゃん」とか声をかけられたら、

「おれはおまえのおじいちゃんじゃねえよ」とか早くいってみたい。

そういうわけで稽古終了。

メンバーの諸君、さあ、次はブラジルで会おう、ブラジルで。いや、先に成田で会うんだけど。

■六月某日 No.1019
ひさしぶりの休みなのだが、VAIOのダウンロード、アップデートなんたらかんたらで大格闘するうちに一日が終わる。

慌てて銭湯にいきサウナでびっしびし。

■六月某日 No.1020
中野の美容院へ。

『青葉』でラーメン食べて『クラシック』へ。

ブロードウエイの本屋で必死に女性自身を立ち読みしている山田山子を発見し、隠れて逃走。

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