彷徨とは精神の自由を表す。
だが、そんなものが可能かどうかはわからない。
ただの散歩であってもかまわない。
目的のない散歩。
癇癪館は遊静舘に改名する。
癇癪は無駄である。
やめた。静かに遊ぶ。
そういった男である。

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■三月某日

No.621

遊静館近くの本屋で『悪魔くん・河童の三平完全ファイル』という本を見つけて購入。

幼少期、絶大なる影響を受けた二番組だ。『ウルトラQ』とか『ウルトラマン』とかより語られないのは、どこかいかがわしい雰囲気を持ったものというせいもあるだろうし、どうやら資料等がマニアに盗まれて、ほとんど無いというせいもあるのだろう、とこの本を読んで知った。この本も完全ファイルとうたいながら、キャストの詳細などがなく、実に不完全だ。しかし、長年記憶の底にあった謎がこれによって随分解明できた。

確か、俳優時代の蜷川幸雄氏が吸血鬼役で出演していたという記憶が確認できた。『悪魔くん』の第12話『狼人間』で満月草を食べて狼人間になってしまう役を演じている。本にはこう記述されている。

「なお、山本役の蜷川氏は現在は演出家として高名で、イギリスで爵位を授与されている。」

いやはや、巨匠も形無しだな。

第一話の『妖怪ガンマー』における人間の眼球を食べる妖怪ガンマーの造形はすばらしい。第八話『水妖怪』の妖怪は肉をだらりと垂らせたりしていて、明らかに水死体をモデルにしている。おぞましいのだ。

第六話『首人形』はデパートのマネキン人形が夜になると一つ目の顔になって動き出すというもので、ほとんど唐十郎の世界だ。唐氏の戯曲に登場するマネキンの原点はもしやこの『悪魔くん』ではないのか。第11話の『幻の館』の表情が変わる美人肖像画のエピソードを私は実は『帝国エイズの逆襲』という戯曲で使用している。とにかく全26話、駄作がないのだ。

チョコレートに目のないメフィストを演じていたふたりの役者さんの名前も確認できた。

悪魔くんを演じていた子役の金子光伸は去年亡くなったということだ。

『河童の三平』もほんと怖かったよ。三平役の金子吉延さんは『赤影』で青影をやっていた子役だと知る。

二番組のプロデューサー平山亨氏は他に『赤影』、『ジャイアントロボ』、『柔道一直線』、『仮面ライダー』、『刑事くん』、『人造人間キカイダー』などを手がけた人で、こう並べてみると、独特のあるテイストで一貫されている。下校時、学校で禁止された買い食いをするような感覚、しかも崩れかけた駄菓子屋の店先の暗さがある。駄菓子屋には鈴木光枝のような老婆がいる。鈴木光枝は三平で呪いの老婆を演じていた。

それにしても買い食い禁止とは不思議な規則だった。買って食ってはいけないということで、盗んで食うのならいいのだろうか。
■三月某日

No.622

執筆。

夜、ニュースのスポーツコーナーで三浦和の現在の姿とそれにコメントする北沢の淡々とした語り口に深く感動する。

扇町ミュージアムスクエア、本当に閉館。

今日は実は閉館イベントの日で私も出演を依頼されていたのだが、いけなかった。

イベントの模様を行った人間から聞き、これも深い感動を覚える。

扇町ミュージアムスクエア、

なにわの我妻、恋人、なにわのわが劇人生、

本当に長い間、ありがとうございました!
■三月某日

No.623

京都へ。

それにしても執筆で忙しいといいながら長々とこの日乗を書いている俺って何だ?
■三月某日

No.624

京都にて。

アピカルのレストラン、内装変えて心機一転らしいが、どうも地に足がついていない。

午前中、大学に行く道すがら、一乗寺下がり松の前を通って詩仙堂へ。武蔵ブームに乗っての団体客らしき一団もいる。

庭を歩くうちに、ふと寺山の映画『田園に死す』のテーマ曲、J・A・シーザーの音楽が『河童の三平』のテーマ曲と似ていることに気がつく。けっこう影響を与えているのではないか?

大学生らしき男が詩仙堂の受付のおばはんに、「ここはいつごろからですか?」と聞くのを、おばはん、「そうねえ、二年ぐらいになるかしらねえ」と平然と答える。学生、「二年」とつぶやき、憮然として去る。

ここだけでなく、京都の古刹のパートらしきばばあどもは態度が悪い。

八大神社に行き、次に金福寺に行く。芭蕉庵、蕪村の墓など、この寺は深く心に染み入る。

うき我を さびしがらせよ かんこ鳥

芭蕉の句に心動かされる。ここいらあたりで一番好きな場所だ。

観光モードに完全入ってしまって、次に円光寺に向かい、水琴窟に耳を当てる。

雲母坂付近で雲母湯という銭湯を見つける。暖かくなったら是非入りたい。

雲母漬けを買う。

午後大学で会議。

「戦争始まっちゃうねえ」と太田氏。
■三月某日

No.625

ドイツ演劇に関する原稿書き。

ぐったり疲れる。
■三月某日

No.626

アメリカ軍のイラク空爆開始。

原稿書き。

深夜までウイスキーを飲みながら戦争のニュースを見る。飲みすぎる。

■三月某日

No.627

第三エロチカの新人入団試験。

劇団員とのミーティング。
■三月某日

No.628

新幹線で盛岡へ。

演出者協会主催の演劇大学のレクチャーのため。

ホテルにチェックインしてすぐに近所の白龍でじゃじゃ麺を食べる。

会場に行くと、ワークショップをし終えた鴻上氏が弁当を食べている。こっちが着いて早々にじゃじゃ麺を食べたというと、わあわあうるさい。この人変わらない。相変わらず漫才師乗りでうるさい。レクチャーを聞いていいかと聞くので、金払えと答える。

レクチャー二時間を終え、打ち上げ。それにしても鴻上氏が平田オリザ氏のことをオリピーと呼ぶのは傑作。平田氏にとっても、エラソーなことぶってるそばでオリピーと呼ばれればガス抜きになっていいだろう。オリピーのほうがテレビでのコメントもおもしろくなるような気がする。

こうして鴻上としゃべるのも何年振りだろうか。

理事長の瓜生氏とも話せて実に楽しい一夜だ。

それにしても鴻上が私のことを「少年のような男だ」と人に紹介しようとするのが気に入らない。

二次会の途中で記憶を無くす。
■三月某日

No.629

朝、ホテルで目覚めると、鴻上が隣で全裸で寝ており、私を見て「おはよう、タケピー」ときたので、あらーと愕然。

というのは嘘。

とにかくどう帰ってきたのかまったく記憶が無い。

盛岡駅からこまち号で角館に向かい、武家屋敷を回る。

新花巻から花巻に辿り着き、大沢温泉へ。

露天を含めた五つの風呂を行き来する。
■三月某日

No.630

一泊後、朝もまたびしびし風呂に浸かり、宮沢賢治記念館に向かう。側の高松庵という蕎麦屋で暮坪かぶのおろしを薬味とした花巻産蕎麦を食べて大いに満足。おいしい!

夜、遊静館に戻る。
■三月某日

No.631

湯疲れで仕事ままならず。
■三月某日

No.632

NHKのテレビの英会話番組で海外での失敗談を紹介していて、「えーっとチーズバーガー」といったところ、チーズバーガーが八個出てきたというのには笑った。

すぐわからない人のために説明すると「えーっと」が「エイト」に聞こえたってことね。

それと先週書き忘れたのだが『笑っていいとも』で本人とわからないほどに化粧した写真が誰かを当てるコーナーで草薙剛が戸川京子と答えていたのには、笑えなかった。

それと先週の詩仙堂でのことで、受付のおばはんが、学生の問いに二年と答えたのは自分の勤務年と勘違いしてのことです。なんかわからなかった人が多いと聞いたので。

暖かくなってきてうれしい。

予想通り、戦争が長引きそうという。それみたことか、だ。ヴェトナム戦争の悪夢再びか。アメリカの友人によるとヴェトナム戦争からアメリカは変わってしまった、犯罪増加とドラッグ問題はそこから始まったという。

図書館に終日こもり、資料集め等々。

図書館にいると、まだまだ読んでいない本、知らないこと知りたいことがたくさんあるなあ、もっと読みたい知りたいとナイーヴに思う。
■三月某日

No.633

タモリは自分の番組にオカマが出てくるとほんと生き生きしてくる。逆に子供が出ると暗い顔をする。その姿に深く共感を覚える。

京橋のセゾン財団の事務所へ。

帰り、ベルギー・ビール専門のパブで都合五種類のビールを飲む。日本のビール会社にはまず作れそうにない癖のある味が絶品だ。発泡酒なんてまずいもんよくみんな飲んでいるもんだ。
■三月某日

No.634

執筆。

夜、歌舞伎町の居酒屋で1杯やり、馴染みのバーに行くが、扉の外にいてもなかの喧騒がわいわい聞こえ、覗くと見事に満席なのでやめる。夜の街もわいわい人だらけだ。人込みを歩いて疲れる。ガキばっか。
■三月某日

No.635

終日、執筆。
■三月某日

No.636

だらだらと休む。

テレビでトリスのCMをやっているのを見たが、ウイスキーが復活しているのだろうか。

扶桑社から出た新文芸誌『en−taxi』をぱらぱらと読む。下手に厚くなくて手ごろに持っていけるので実にいい。雑誌としていい出来だと思う。読んでいて小説を読みたい書きたいという気にさせる。既存の文芸誌を読むのが空しいのは、小説を書く気が失せるからだ。京都の演劇誌『舞台芸術』もこういう具合にいかないものだろうか。もっと読者に舞台を見たいという気にさせなければ。2,3千ほど部数出ればいいなんて根性では1千だって売れない。

どこかつまらないのは、書き手のせいだろうか。概ねクソマジメな文章がまるでおもしろくない。ためになりそうだけどおもしろくない。どうも大学人の文章というのはつまらない。若い頃ちゃんと遊んでいないなとわかる。一度でも二度でも酒かギャンブルか色に狂う経験を持たなければ。こうしたことは文に出る。蕩尽、浪費、放蕩はうまくいけばその人のなかで醸成され、文に厚みと艶をもたらす。よくいい年こいて教え子の女子大生と心中かなんかしちゃうのも、免疫がない証拠だよ。

夜、K―1サップvsミルコ戦を見る。人気者になって練習不足をささやかれていたサップが定石通り負ける。しっかしミルコの一発、サップほんとに痛そうだった。やたら強かったから、打たれ弱いせいもあるのね。
■三月某日

No.637

執筆。原稿チェック。なにやら忙しい。

資料読み、『山の音』、『河内山宗俊』、『神田川淫乱戦争』を見る。

ところで『週刊新潮』が10数年前のポランスキーのレイプ事件における当時被害者の13歳少女の供述を掲載しているが、なるほどこういうことだったのか。当時はジャック・ニコルソン邸で起きたことというのである種のパーティーで起きたことと理解し、それにしてもなぜジャック・ニコルソンには手が回らなかったのだろうと不思議に思っていた。このためポランスキーはほぼ永遠にアメリカには入国できないわけだ。少女のほうの一方的な供述であるからレイプかどうかは微妙だが、13歳というのはいくらなんでも逃れようがない。それにしてもこの時期にかつての供述を載せるとはこの雑誌も意地が悪い。
■四月某日

No.638

執筆。

レスリー・チャン自殺の報。「恋人の唐さん」という記事に一瞬驚く。
■四月某日

No.639

執筆。

一段落がつく。頭が冴え渡り過ぎてしまい、クールダウンのためにウイスキーを飲む。飲み過ぎる。

胸のあたりが重い。
■四月某日

No.640

『麦秋』を再見。

夕刻時、発熱。過労と風邪のためと思われる。

No.641〜 バックナンバー

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