「フクロウの賭け」稽古場から

『フクロウの賭け』

作・演出:川村 毅

●出演

手塚とおる、高橋かおり、飯尾和樹(ずん)、

伊澤 勉、笠木 誠/江守 徹

2006.2.9-19
シアタートラム

「フクロウの賭け」稽古場から 第1回

はじめまして。わたくし、福田福朗と申す者です。

フクロウをこよなく愛し、五十年。

昨年まで動物園の飼育員として、日夜、フクロウと接しておりました。

そのせいか、時に、私はフクロウによく似てるとおっしゃる方もいらっしゃいます。

現在は奥多摩の方で、隠居生活を送っております。

そんな私に、フクロウを題材にした演劇の公演が行われるという情報が昔の仲間から入りました。

まぁ、私は演劇など、観たこともない人間なので、全く興味がありませんでした。

しかし、その公演の題名を見て仰天しました。

「フクロウの賭け」

なんと私の愛するフクロウが賭けごとの対象にされるようなのです。

いくら虚構の世界といえども、これは非常に由々しき事態。

私は、フクロウと同じく頭を180°回転しました。

男・福田福朗。ここは、一発奮起し、この公演の作・演出であるカワムラさんという方に一言、「フクロウを賭けごとの対象にするべきではない」と提言してさしあげようと考えたわけです。

拙文で恐縮ですが、このような私の行動を、全国のフクロウ愛好家の皆様に報告させていただきたいと思います。

私は奥多摩から稽古場へ電車を乗り継ぎ向かいました。

すると、世田谷パブリックシアターの方から、「関係者以外は立ち入り禁止です」と叱られました。

なんのことやら。私ほど、フクロウと関係している人間はいないはずです。

私は、福朗なのですから。

しかり、その方には、理解してもらえず、結局、内部には侵入できませんでした。

そこで、遠くから、稽古場の様子を見守ることにしました。

御安心を。私はフクロウと同じく人間の百倍程度の感度の目を持っているのです。

稽古場Cスタジオでは、はじめての顔合わせが行われていました。

ふむふむ。どうやら読み合わせをしているようです。

おっと、奥に見えるいかめしい方は、主演の江守徹氏ですな。

頻繁にテレビで拝見するお顔です。

まさに、フクロウを賭けにしようとする最中でしょうか。

表情は真剣そのもの。

そして、今回の首謀者カワムラタケシ氏。

なにやら熱く説明しています。

……遠目から見ているので、声が聞こえない。

老体にはこたえたので本日、これで終了。

次回までに息子に薦められた高性能補聴器を購入し、再度挑みたいと思います。

乞うご期待。

by時枝正俊

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