*9日プレビュー、10日初日の舞台をご覧いただいた初日レポーターのみなさま
からよせられた、ご感想を2回に分けてご紹介いたします

9日プレビューのご感想
タケさん 43歳・男性
ストーリーが魅力的で、先の進行に予測がつかず、どんどんと引き込まれていきました。犯罪被害者家族の心の痛み、加害者家族の心の痛み、そして犯罪者は何を考えているかわからない。

犯罪は個人の責任よりも社会環境が引き起こすことが多い。しかし裁判制度など、社会制度はそれを補佐していない。新聞、雑誌などで目にしたことであるが、劇はそれらの問題を投げかけた。簡単に解くことはできない。

リアリズムと妄想のようなものがまじる舞台空間。特に手塚とおるの演技は心不安定な殺人経験青年をうまく演じた。高橋かおりも魅力的だ。餌売りもおもしろかった。江守さんの存在感はさすが。

場面転換が静かでやや長めなのは、役者がリアリズムの感情を出し切らないようにするのと同時で、観客が感情移入してのメロドラマとなることを避け、観客に考えてもらいたいという時間とみた。

カンゲキ好きさん 40歳・男性
シアタートラム独特の高さをを活かした空間がとても印象的で、各部屋にメインのお二人(江守さん、手塚さん)が配されているときの感じがすごく良かった。

江守さん、手塚さんの演技はやはり流石だったが、お二人を中心に作り出された舞台の空気感に、息子役の方が持ち込む、独特の歪みがすごく面白かった。

タイトルともリンクしたラストのつけかたは、日常生活的な悩みに対するアンチテーゼとしては有効かもしれないが、登場人物達が抱えている問題は、それ以上に重いのでは、という気がしてやや釈然としない気持ちが残った。

木元太郎さん 22歳・男性
カラカラと喉が乾いてくるような緊張感、緊迫感でした。

江守徹と手塚とおるの怪演ももちろんですが、あの物語の中で一歩離れたとこにいる、飯尾和樹の自然体な演技が心地よかったです。

コミュニケーョンについて考えさせられる作品だったと思います。『内と外』『実体』を意識させる演出が印象に残りました。部屋の内側にはドアがあるが、外に通じるドアはない。外界と通じることにより、コミュニケーションが必要になります。他者との接触が生まれるわけです。

しかし、そこには中身はない。実体のない見た目だけのコミュニケーションが表現されていた気がします。フクロウも、お酒も、カップ麺も、映写機から流れる映像も、中身はありませんでした。

空っぽのやり取りでは、見た目の印象や、名前や、記憶等が使われ、そこに誤解が生まれます。矢吹ひとしが「誤解だ」とつぶやく、あのひと言には静かな叫びが詰まっていました。

挨拶文にあるように、日本人は複雑さから逃避し、複雑さを追い払い、どこかへ向かって行っています。

劇中、何度も追い払われていたカラス。あれは私たち自身ではないかと、カーテンコールに立つ役者陣の黒い衣装を観て思いました。

A.Iさん 42歳・女性
ほとんど予備知識無しに行ったので、「ついて行けなかったらどうしよう」と思っていたのですが、そんな心配はなく、1時間50分が「どうなるの、どうなってるの?」と、ストーリーを追いかけて、眠くなるなんてことなく、集中してました。

部屋の壁と階段が主で、あまり生活感の無いセット、登場人物のモノトーンな衣装、でも、舞台上の役者さんたちの息遣いが間近に感じられて(シアタートラムって舞台が近いですね)、だんだん目の前に、フクロウたちの動きが、ドアの開け閉めが、8ミリフィルムの画面が見えてきます。

いかにも何かがありそうな江守さんと手塚さんに引き込まれて見ているうちに、刺激された私の想像力は、暗転時の壁の光のシミの広がりにも不安を感じてしまいます。花火の光の中には血の海が立ち上がってくるような気がしました。

観客の予想を裏切るような裏切らないような意外な結末は、終わっても終わりなく感じられて、登場人物たちのその後を預けられたような気がします。ハッピーな気分で家路にはつけませんが、全ての人や物に対する想像力が磨かれて、自分だけが抱えていると思っているものが、他の人の目から見るとどうなのか、他の人はどんなものを抱えているのか、とても考えさせられました。

全編重々しいわけじゃなくって、クスリという笑いもあるし、見ていて疲れるわけでもありませんでした。見慣れた日常生活が薄い壁に覆われていて、そこにどんどん亀裂が入っていって、その向こうが透けて見えてくるのがスリリングでした。見てしまったことに後悔はしないけれど、刺激された想像の翼はどんどん広がって行きそうです。

「フクロウの賭け」公演情報

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