99年川村毅作「ロスト・バビロン」アデレード・フリンジフェスティバルにて上演!
2006年3月6日−12日 Hartley Playhouse

日本より、哀藤誠司と遠藤香織が出演!

フリンジパークにて。フェスティバル参加のカンパニーが一堂に会した宣伝用パフォーマンスの模様
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From the Director

Russell Fewster

Artistic Director

Shifting Point Theatre Company

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Five years ago Takeshi Kawamura and I agreed to work on a collaboration to produce an English language production of his play The Lost Babylon. The intention was to bring Japanese and Australian Theatre artists together in a genuine sharing of skills. I am thrilled that through all the readings, creative developments and rehearsals in both countries that this has happened. Cultural exchange is ultimately artist driven and it has been the absolute trust and commitment from the artists that has made this project possible. The Lost Babylon 'marathon' has finally come to the finish line.

I would like to pay special tribute to Yoshiko Hirai the General Manager of T-factory for her quiet and always steady devotion to the work which like an incoming tide has brought it to completion, in her own words 'step by step, slowly and valuably'. Secondly I would like to thank Dr Adrian Guthrie from the University of SA, for giving the project a home and essential in-kind support to facilitate its realization. I would also like to thank my close collaborator Nic Mollison who has spent many hours with me developing the show particularly in regards to video and lighting design. I want to pay tribute to the financial and moral support from my mother, Margaret Fewster who Kawamura referred to tellingly as 'my producer'. I want to acknowledge the 60 actors from Japan and Australia who all worked on the project at some point. And finally I take my hat off to the dedicated crew for making all the technical aspects possible.

What has attracted me to Kawamura's work is its aesthetic freshness and social consciousness. I have been fortunate to have worked in Japan on five different occasions and I continually find both traditional and avant-garde theatre practices there inspiring. As an artist I find my work has been increasingly politicized in response to my perception that our long cherished democratic freedoms are being steadily eroded by the dominant forces in our society. The Lost Babylon is I believe a clear response to the notion of simulation that what we perceive to be reality is in fact a constructed fantasy - a fantasy so real that we need theatre more than ever to unravel it's construction.

As Carol Martin the original editor of the translation so eloquently stated: The Lost Babylon represents our 'shadow world" - a shadow world I might add that so easily threatens to overwhelm us if we are not on our guard.

−「THE LOST BABYLON」折り込みパンフより−

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ロスト・バビロンのレビュー、宣伝パレードの様子が現地紙に掲載されました

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ロスト・バビロン

「ロスト・バビロン」は、1999年初演(川村毅作・演出、吉田鋼太郎・中川安奈主演、ザ・スズナリ他)の作品です。

自由に人を撃てるアミューズメントパーク<ロスト・バビロン>を舞台に、バーチャルと現実が交錯するエンタテインメントです。戯曲は「テアトロ」1999年1月号に収録されています。

2000年 ニューヨークの演劇誌TDRにサラ・ヤンセン氏による英訳戯曲が掲載。これを目にした、オーストラリア・アデレードのシフティングポイントシアターカンパニーのディレクター、ラッセル・フュースター氏からコラボレーションの打診。

2001年 セゾン文化財団助成によりラッセル氏来日。ワークショップを開催。アデレードで川村も参加して翻訳戯曲確認作業、豪州俳優によるリーディング公演。

2002年アデレードでのプレ公演

2002年 アジアリンクの助成によりラッセル氏再来日、日本人俳優によるスタジオワークショップ公演。アデレードにて、哀藤誠司、遠藤香織参加のプレ公演。

と、一歩一歩創りあげてきたプロダクションです。


右より、川村、ディレクターのラッセル、哀藤、遠藤

今回は、その最終章となる本公演。ラッセルの演出はオーストラリアの観客に向けて、大胆に日本のイメージとしての今日性を打ち出し、アキハバラの世界のような(?)、マンガ、コスプレなども盛り込んで、舞台すべてがゲームの中の世界として描いたそうです。

台詞は英語で、哀藤誠司はそのテーマパークの管理者「軍人」役、遠藤香織は主人公の女の幻影「少女」役で出演しました。

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-アデレード公演レポート-

哀藤 誠司

I'll be back !

やんやと騒ぐ人々。アイルランドの民族楽器を吹くデイブに迎えられて始まったメルボルンストリートにある打ち上げ会場・ボス役のアライフミト氏が経営する日本食レストラン「さと」でのボクのスピーチの最後の台詞。よくこの日を迎えることが出来たものだ。

思えば前回プレビュー公演出演のための滞在中に父の訃報を聞いた因縁のあるアデレード。初めての英語の台詞。種々の問題はあったが何とかこの日までたどり着けたことに感謝。皆喜んでくれた。芝居には国境は無いのだと信じたい。

そんなアデレードでの日々をここで少しだけ振り返ってみようと思う。もうあれから3週間が経ってしまった。記憶が新しいうちに記しておかなくては忘れてしまいそうだから。

打ち上げの模様〜奥中央、演出のラッセル

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2月某日。厳寒の東京をあとにして空路オーストラリアまで。ほとんど忘れていたころに舞い込んできた、この作品の出演依頼を受けることにしたのはもう去年の出来事だ。

演出家・ラッセルはこの芝居をよくマラソンに例える。

2001年オーストラリアでのリーディング後、ラッセルが来日、第三エロチカでワークショップをしてから5年。マラソンの最終コーナー。そのために日本から呼ばれるのはもしかしたら名誉なことなのかもしれない。

メルボルンで乗り換えて真夏のアデレードまで。気温差は20度近く。でも湿度が低いせいかそれほど暑くは感じない。元来夏は好きな季節だし、3度目のアデレードに着いたという感慨が暑さを忘れさせているのかもしれない。最初は第三エロチカ公演「A Man Called Macbeth」でのアデレード・フェスティバル1994参加だった。

空港までラッセルが迎えに来てくれた。再会を喜ぶ。ふと見回すと4年の間に空港が新しく整備されていた。アデレードという都市も変わろうとしているのかもしれないなどと感じつつステイ先へ。

到着してすぐに劇場に案内される。大学内の劇場。キャパは250人といったところか。劇中で使うビデオのシーンを撮影しているメンバー達に紹介される。今回襲撃者A役のフィルとも4年ぶりに再会。前回のプレビュー公演では主演の「男」を演じていたナイスガイだ。今回は顎鬚をそっているので別人に見える。あとは気若い女役のウエンディ。スタッフのドゥェイン、ダニエル、オンドレイ。皆やる気満々だ。早速気を引き締める。

そしてその日はそのままそれぞれのステイ先へ。

翌日、早朝から劇場へ。冒頭のシーンを早速あたる。稽古期間はほぼ2週間。個人的にはもう少し時間が欲しいところだったがそうも言ってはいられない。

JUST DO IT! そう、やるのだ。

主演のロブとシェリル。挨拶もそこそこに台詞を交わし始める。何だか英語の台詞にリアリティは無いが何とか午前中の稽古終了。とりあえず日本で覚えていった英語の台詞が通じているようで一安心。午後は遠藤に頼まれて稽古風景のビデオ撮影。最中何だか不思議な感覚に捉われる。

劇場という空間だからなのか……。自分が何処にいるのかわからなくなる感覚。今頃時差ぼけか?? などと考えながらそんな午後を過ごして帰宅。

翌日も1幕の稽古。1幕に関しては日本で完璧に台詞を入れていったので何とか無難に進むが、2幕の説明台詞にはまだ自信が無かったので帰宅後も台詞の復習。アクセントなどはすぐに周りのヒトに聞くことが出来るので安心だ。日本で覚えているときはまだまだ不安だったのでね……。このまま段々と英語に慣れていきたいものだ。うん。

稽古後、帰り道の広大な公園で花火大会。

中々規模が大きく、観光バスなんかも止まっていたりする。すごい人出に圧倒された。思えば前回、父の訃報を聞いた後、夜中に一人で歩いたのもこの公園。少し因縁を感じないこともない。もう4年が過ぎたのだ。あっという間の4年間だった。その間にいろいろなことが変わり、僕は今アデレードにいる。不思議な人生だ。などと考えつつ花火に酔いしれる。

初めての日曜日の休日は、ラッセル宅にて顔合わせという名のバーベキュー。これでほぼ全員と顔をあわせたことになる。さてさてどうなることやら……。期待感が膨らむ。

次の週。稽古6日目にして1幕を通す。

アクションシーン。映像がらみのシーン等、まだまだいろいろやらなければいけないことはあるが、とりあえず無難に通し終了。

その後ラッセルに連れられてシティ内にあるシュ―ティング・ギャラリーへ。今回の芝居のスポンサーの一方であるそのお店の好意で、3種類の銃を安価で撃たせてもらう。もちろん、初体験だ。グロッグとリボルバーとマグナム。中でもマグナムのパワーに驚く。これも貴重な体験だ。感謝。

来週からは2幕の稽古。もう一度台詞を確認。中々英語の台詞が入っていかないのも新鮮な体験だ。うん。でも日々ストレスはゆっくりと溜まっていく。

初めての休日。遠藤とともにカンガルー島へ。今回唯一の観光らしい観光。ただ日帰りの観光なので朝早くに家を出て夜遅くに帰宅。中々ハードな一日。でも太古の時代からそのまま保たれているという原生林からは何かエネルギーようなものを貰った気になった。ま、気のせいかもしれないけれど。

稽古2週目に入って徐々に英語にも慣れ始め、映像とか音が整ってきた。中々良い感じだ。翻訳のせいなのか演出のせいなのか定かではないが微妙に作品に対する解釈が違っていたりする。この違和感をストレスにしないよう注意する。

週末には2幕を通してその後1幕も。そしてもう本番が真近に迫る。……不安感からか酒量が増える。ま、暑さのせいもあるのだろうけれど。

週末、新聞社の取材を受けた後、みんなと一緒にフリンジ・パークまで。テレビで宣伝させてもらうため、衣装を着ての宣伝活動。様々な出し物が一堂に会する。さながら見本市のようだ。努力の甲斐あってか全チャンネルに映ることになる。朗報だ。うん。

次の日はパレードに参加。このフリンジの期間だけで大小合わせて数百もの団体がアデレードの町のいたるところでパフオーマンスを繰り広げる。その全てが参加して街を練り歩くパレードなのだ。僕らもプラカードを片手に街を1時間ほど練り歩く。もちろん衣装を着けたままだ。沿道にはすごい数の見物客。初めての経験に張り切りすぎて疲れが最高潮になる。でもこれも良い経験だ。うん。

本番まであと一週間。銃声のための稽古。中々合わないので稽古が長引く。大丈夫なのか……。不安が高まる。何度かテクニカル稽古をした後、通し稽古を数回。いくらなんでもこんなに短い期間で芝居を仕上げるのは初めての経験だったので初日まで不安が消えることは無かった。

初日開幕。思ったよりも人々の反応は良く、ほっと一息。そのままそのまま。いろいろな箇所で小さなミスは起こったが何とかそれぞれでフォローをして最終日まで。8ステージのうち朝10時開演のスクールマチネ(学生のための公演)が2回あったが、そこでの反応が一番良かった。やはりコンピューター・ゲームに置き換えたラッセルの演出は子供たちに受け入れられやすかったようだ。

そして迎えた千秋楽。出来としては前の晩にはかなわないものの、個人的には満足のいく出来。こうやって自分が英語で芝居をするなんて想像もしていなかっただけに感慨もひとしお……、と言ったところだろうか。

終演後、みんなで打ち上げ。冒頭に書いたボス役のフミト氏が経営する日本食レストランにて。別れ際に主演のロブから言われた「君と共演できて光栄だった。」という言葉が心に沁みる。

ロブはアメリカ人。ロンドンのRADAで学んだ、とても演技の上手いシェイクスピア俳優だ。もし機会があればいつかまた共演したいものだ。うん。

その後、フリンジ・パークで朝まで飲もうとみんなに誘われるも次の日のフライトが朝の6時からということもあり、泣く泣く辞退。

あっという間の24日間。忙しく駆け抜けたという印象。多分これからいろいろと思い出すたびに後悔とか感傷に浸ったりするのだろう。でも確かにやりきったのだ。これは自信になると信じたい。

いつかまたお会いできることを祈って。

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