'04.6.11-13 助成:セゾン文化財団

参加者の方にご感想をいただきました


未来へつながる三日間

古宇田 譲

「アキラとタケシのからだとことばのワークショップ」。このWS(ワークショップ)は、おかしい。誤解のないよう初めに断っておきますが、決して悪い意味ではありません。悪口、文句、クレーム、売り言葉、呪い、などといった類とは全く関係ございません。「おかしい」、自分なりの最大級の賛辞です。

そもそも「おかしい」とは、「1.笑える。おもしろい。興味を引かれる。2.変だ。妙だ。異常だ。」といった意味(のはず)ですが、このWSは両方の意味で、すばらしく「おかしい」のです。通常ではないからこそ強く興味を覚える、とも言い換えられるでしょうか。

具体的に何がおかしいかといえば、何をおいてもその内容です。舞踊家・笠井叡氏と劇作家/演出家・川村毅氏、このお二人が揃い踏みのWSってだけで十分おかしいですが、中身はもっとおかしかったです。

参加者のほとんどはダンサーではなく俳優。
今迄経験のないような、空間と身体を意識するレッスン

まず、川村氏が二つの台本の一部を参加者に配布。氏本人の著作「KOMACHI」と、T・ウィリアムズ著作の「欲望という名の電車」。これを普通に皆で読み合わせというのではなく、コトバを使わずにやるというのが実におかしい。「KOMACHI」の老女=小町役にはもともと台詞がありませんし。説明・表現よりもまず、その空間に在る一つの存在としての意識を持つこと=身体性の獲得、ということが鍵なのではないかと思われます。

次は笠井氏。氏もエドガー・A・ポーの名詩「大鴉」や北原白秋の詩、先に配布済みの「欲望という名の電車」などを用いながら、コトバとカラダの関係に迫ります。オイリュトミーと呼ばれる発声法(?)―母音はどこから来るのか―。一人称・二人称・三人称それぞれの身体。仮想空間の構築時に意識・身体・台詞はどのように変わるか、など。

おかしいぐらいにコトバとカラダを使っているうちに、あれよあれよと時間が過ぎ、一日の終わりにはコトバもカラダも心地よいぐらいヘロヘロです。笠井氏は、「コトバは本来、意味の伝達以前に、エネルギーの伝達のためのものである」と言われましたがそういった意味では、私はエネルギーの伝達という点に関して合格なのかもしれません。伝達というか漏洩していたような気もします。

と、充実感に溢れる日々でしたが、心残りの一つをあげれば、時間が多分にかかってしまうとの理由で断念された、「欲望(略)」を言葉を使わずに演ずる、という試みが出来なかったことでしょうか。台詞を中心とするリアリズム演劇の代表である(偏見?)「欲望(略)」を、(相手役の台詞は残しますが)あえて言葉を使わずに演じるとどうなるのか。結構興味深いことだったのですが、さすがに合計十二時間という時間には勝てません。オイリュトミーに関しても、母音だけでなく子音について等も学びたかった。でもまあ、それは次回のお楽しみ。ということで、色々な意味で未来へとつながる三日間でした。

笠井さんの朗読を体現するレッスン
(なんと笠井さんは台詞も上手い!!)

川村のテキストを笠井さん指導の空間意識の中で本読み
川村、念願のオイリュトミー初体験! 川村毅×笠井叡

出会うべくして出会った二人!! またやりましょうー!

次回は舞台経験豊富な俳優さんこそ是非! 面白いですよ!

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