第五回

5月18日(土)
仮のセットが組まれ、衣裳が出来、音が入り、次第に本番らしい
雰囲気になってきた稽古場。

役者の皆さんも気合い充分、本番を前にした高揚感がビシバシと
伝わってきます。

   

■■ スペシャルインタビュー ■■

              毬谷友子さんの巻 

 
 
毬谷友子

宝塚歌劇団出身。在団中は歌唱力の高さに定評があり、歌劇団設立70周年記念式典において「すみれの花咲く頃」をソロで歌う。退団後、舞台を中心に活躍中。劇作家の父、故矢代静一氏の作品、一人芝居「弥々」をライフワークとして上演し続けている。主な舞台出演作に「マクベス」(ロベール・ルパージュ演出)「トゥ−ランドッド姫」(ルドルフ・ジョウオ演出)「贋作・桜の森の満開の下」(野田秀樹演出)「ネネム」「パードレノーストロ」(佐藤信演出・世田谷パブリックシアター)他多数。映画「夢二」(鈴木清順監督)「外科室」(坂東玉三郎監督)他。
   
吉村 お疲れさまでした。毬谷さんは、川村さんとは初めてだと思うんですけど、
最初にこの本を読んだ時、どのように思われましたか?
毬谷 何が何だかわからなくて。現実なのか、夢の世界なのか、死後の世界なのか。
読みようによってはどうにでもなってしまう感じがして。これは、字面を追うんじゃなくて、
字面以外のところを考えて、見つけて行かなきゃいけないと。どうしたらいいんだろう?って
感じでしたね。
吉村 役を作る、ということに関して少しうかがいたいのですが。
毬谷 私は、本を読んで大事にするのは第一印象なんですね。初めて物語に出会った時の
直感っていうのは、大抵合ってて。役を作る時も作り込むと言うよりは、第一印象、直感で、
ひらめくというか、降りてくるという感覚なのかな。
吉村 今回は三つの役を演じてらっしゃいますが?
毬谷 私、いろんな声が出ちゃうので、無理なく何人もの声のトーンというのは出せるんですよ。
この前も「源氏物語」の朗読をやったんですけど、17、8人全部声の色を変えてやったん
ですね。なので、今回の三つの役というのは少ない方で(笑)子供の声だけでも10バージョン
くらい持ってますよ。
吉村 す、すごい。えーと、川村さんはどうですか?
毬谷 川村さんはねー こんなに自由にやらせてくださる方だとは思ってなかったですね。演出家の
中には、伸びてもいない枝を剪定するようなタイプの方もいて、そういうのはつらいんですよ。
今回はもう、のびのびやらせてもらってます。

…私は、自分の親が作家だったということもあって、尊重するというか、作品を大事に思うんで
すね。真っ白な紙に、一行ずつ、文字を、世界を書いていくというのは大変なことで、凄いこと
で、だからこちらの勝手で、作家の思いを壊したりしちゃいけない、という気持ちが強いんです。
俳優の仕事は?と聞かれることがあると、「作家の魂を観客に伝える宅急便屋」と言ってる
んですね。自分がどう思う、なんてことは傲慢でさ。役者は楽器で、その楽器が壊れていたら
問題外だけど、きちんと楽器ができたうえで、作家の心、魂を汲み取って、そのまま伝えるのが
俳優の仕事じゃないかな?と思ってるんです。だからね、川村さんにも「こういうことですか?」
とか「これでいいの?」とよく聞くんですけど、そういう時、川村さんはニコニコしながら「うん、
そう」とかおっしゃるので「本当にー?」と思ってるんですけど(笑)

  (後記)
  宝塚、お嬢様、天性の女優 いろんなイメージがありましたが、少女のように目を輝かせて
芝居のことを語る毬谷さんは、とても可愛かったのです。
その声を、表情を、間近で感じることができて、シアワセなひとときでした。

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